女子高生・星梛と強引なイケメン天狗・夕月の結婚生活を描いた漫画『いしゅ婚!~天狗のかりそめ花嫁~』(講談社)が漫画アプリで1位を獲得するなど話題を集めています。夕月は呪いを受けた烏天狗で、呪いを解くために人間と結婚しなければならないというラブストーリー。この不思議な世界観の作品を描いたきっかけや今後の展開などについて、作者の悦若えつこさんに話を聞きました。
■「お姫様抱っこで夜空を散歩する」 担当編集の何気ない一言から生まれたストーリー
『いしゅ婚!~天狗のかりそめ花嫁~』(講談社)1話より
「担当編集さんと別件で打ち合わせしていたときの何気ない会話から生まれました。担当さんが『烏天狗の黒髪イケメンにお姫様抱っこされて夜空を飛ぶって素敵じゃないですか?』って言い出して、最初は『何それ!?』って笑っていたんです。でも、もともと私は牛若丸伝説のある鞍馬山が好きでよく参拝に行っていたのですが、鞍馬山といえば天狗で有名なので何だかご縁のようなものを感じて、『よし!その場面を描こう!』となったのが始まりです。そのため、1話ではわかりづらいですが、物語後半で出てくる山のシーンなどは少し鞍馬山を意識しています」
――そこからストーリーはどのようにできていきましたか?
「"お姫様抱っこで夜空を散歩する"という目的を意識しつつ、『キスで呪いが解ける』という、和風ファンタジーだけど敢えて西洋の童話みたいな設定もいいよねって話をして基本の部分が決まり、そこから『天狗に嫁入りさせられる』という流れになりました」
――そんな個性的な登場人物とノンストップのストーリー展開がとても魅力的な本作。特にこだわった部分は?
「前作のヒーローが赤髪で朗らかな忠犬系男子だったので、今回のヒーローである夕月(ゆづき)は正反対のタイプにしたくて、黒髪クール系のちょっと強引なマイペース男子になりました。冒頭で『綺麗な人』という主人公のモノローグがあるので、頑張ってそう見えるように描いています。主人公の星梛(せな)は、天狗相手でも物怖じしないようなしっかりした女の子にしたかったのと、古風で和風設定のヒーローに対して現代的な雰囲気にしたいという点を意識してデザインしました」
――ストーリーはいかがですか?
「ストーリーについては、WEBやアプリなどの連載では展開がゆっくりだと飽きられてしまう場合もあるので、話をスピーディーに進めることは意識しました。これから2人の関係性もどんどん変わっていきます」
■"すこし不思議"な世界観を楽しんで! 日常から離れて漫画で癒されてもらいたい
『いしゅ婚!~天狗のかりそめ花嫁~』(講談社)1話より
――悦若さんが特にお気に入りのシーンやセリフを教えてください。
「1話でいうと、やはり終盤の『お姫様抱っこで夜空散歩』の場面です。物語が生まれるきっかけになったシーンだというのはもちろんですが、実はここで2人が初めてお互いの名前を呼ぶんです。これまで星梛のことを『嫁(妻)』としか意識しておらず名前を覚えるつもりもなかった夕月が、最後に名前を尋ねる...というのが個人的にすごく気に入っています」
――今後、ストーリーはどのように展開していくのでしょうか?
「とある理由から、1話のラストでが星梛の自宅に押し掛けてくるのですが、ここから烏天狗との同居が始まり夕月は星梛と同じ高校に通うことになります。ひとつ屋根の下で繰り広げられるハプニングや学校でのドタバタ、そして話が進むにつれて最初はクールだった夕月がどんどん星梛に弱く甘くなっていくのも見どころかもしれないです! また、1話ではチラッとしか出ていなかった、隣山の烏天狗も本格的に登場します。彼の出現が2人にどんな影響を与えるのかも楽しんでもらえたらいいなと思います」
――お手紙やSNSなどでたくさんの反響が届いているようですが、嬉しかったメッセージや意外だった感想など、印象に残っているものは?
「『夕月がかっこいい』というご感想を多く頂けて嬉しいですね。物語が進んでくると『夕月かわいい』と言ってくださる方もいらっしゃって...確かに彼はどんどん可愛くなります(笑)。あと、意外と隣山の烏天狗(本格登場後)が人気なのが面白かったです」
――ちょっと強引で不思議な魅力のあるイケメンの夕月は大人の女性もキュンキュンできそうですね。
「普段生活をしていると色々なことがあると思います。そんなときに、ちょっと日常から離れて漫画世界で癒されてもらえたらいいなと思います。現代日本が舞台なので、『もしかしたらあり得るかもしれない』という"すこし不思議"な感じを楽しんでいただけたらと! 特に天狗は色んな所に伝説があるので! そして、恋愛感情に疎くて強引に嫁入りを迫ってくる人外男子、そんな彼が恋を知ったらどうなるのか...続きもぜひ読んでもらえたら嬉しいです」