病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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体内の異物に対する排除反応
「炎症」
●できるだけ薬を使わずに治そう
「炎症」とは、体が外からの危険な異物を察知したときに起こす排除反応です。
体は、炎症を起こすことによって、害を及ぼす異物を取り除いたり、組織の修復を行なったりするわけです。炎症の原因となるのは、細菌や外傷、温熱(火傷(やけど))、寒冷(凍傷(とうしょう))、光線(日焼け)などですが、もっとも多く見られるのは細菌による炎症です。
細菌は皮膚をはじめ、人体に常に侵入していますが、たいていは小さな炎症で処理されています。ところが、炎症の程度が大きく、重度のものになるとそれに気付くようになるのです。
炎症の主な特徴は、「発赤(ほっせき)(赤くなる)」「温熱(熱を持つ)」「痛み」「腫(は)れ」の四つです。これらがすべて見られる場合は、炎症が起こっていると考えられます。
たとえば、体のどこかにおできができたとします。この場合、医師からは「これは炎症を起こしていますね」などと診断されます。
おできは最初、小さな赤い点となって現れますが、そのうちだんだんと大きくなっていき、熱を持ちはじめてきます。やがて、ズキズキと痛み出し、ぷっくりと膨(ふく)れ上がり、数日後には皮膚を押すとブヨブヨしてきます。こうなると膿(うみ)がたまっている証拠ですので、病院で膿を抜くことになります。膿とは、病原体を食べた白血球が死滅してできたものです。
このおできの一連の流れを見ても、先述の四つの要素が含まれていることがわかります。
また、おできのようなケースのほか、アトピー性皮膚炎も、いわば皮膚の炎症といえます。アトピー性皮膚炎の場合、炎症によるかゆみが続くことによってさらに状況が悪化してしまうという側面があるため、かゆみを抑えることが何よりも優先される傾向にあります。
ただし、先述のように、炎症は体の自然な排除反応ですから、薬を服用することなどによって炎症を無理に押さえ込もうとすると、治りが遅くなることも考えられます。できるだけ自然に治癒(ちゆ)できるよう、睡眠や栄養を十分に摂(と)るように心掛けてください。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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