誰にでも頭がかゆくなった経験はあると思います。一時的なものならあまり気にする必要はありませんが、かゆみが激しくなったり長引いたりするようなら、病気を疑ってみてください。「頭皮のかゆみ」の原因となる病気は主に4つ。自分の症状と比較してみてください。
皮脂の分泌が過剰になって引き起こされる
「脂漏性(しろうせい)皮膚炎」
頭皮のかゆみの原因として真っ先に挙げられるのは脂漏性皮膚炎です。「脂漏」とは皮脂の分泌が盛んな状態を指し、過剰な皮脂や汗によって常在菌のバランスが崩れると、頭皮に炎症が引き起こされます。体質的に皮脂の分泌が多い人は再発を繰り返しやすく、また皮脂や汗の分泌が盛んになる夏に患者の数が多くなります。最近は持田ヘルスケアの「コラージュフルフルネクスト」など抗真菌剤入りのシャンプーが市販されており、自宅でのセルフケアとして病院でもおすすめしています。
肌が激しく乾燥する「皮脂欠乏症」
反対に、皮脂が不足して皮膚が乾燥する皮脂欠乏症(皮脂欠乏性湿疹)という病気もあります。皮脂の分泌量は加齢とともに自然と低下していくため、高齢者ほど保湿などのスキンケアが大切です。また、洗髪のしすぎは乾燥の原因となります。1日1回までにとどめましょう。
薬品などによるかぶれ「接触性皮膚炎」
季節とは関係なく「髪を染めたり、育毛剤を塗ったりした後は必ず頭がかゆくなる」という場合は接触性皮膚炎の可能性が濃厚です。薬品などの刺激による炎症で、染毛剤・育毛剤や整髪料などが原因となるケースがほとんどです。原因を除去しないと症状が改善されないため、かゆみがひどい場合はすぐにこれらの使用を中止し、医師の診察を受けてください。
自己免疫機能の異常などによる「乾癬(かんせん)」
乾癬(かんせん。表皮の新陳代謝が異常に活発になる病気。典型的な症状として、皮膚の一部が赤くなり、その上に白く細いかさぶたが現れる)も頭皮に症状が出ることの多い病気です。慢性疾患のため継続的な治療が必要とされ、外用薬の使用が長期にわたります。
そのため、薬を塗ったときの髪のベタつきや不快感が患者の負担になりやすく、これまでは軟膏ほどベタつかない、ローションタイプの外用薬がよく処方されていました。この点を改善したのが、2017年に発売された乾癬の処方薬「コムクロシャンプー」です。ステロイド剤が配合されており、乾いた頭皮につけてしばらく置いた後、お湯か水で泡立てて洗い流すだけで効果があります。
次の記事「お風呂とヘアカラーは絶対NG! 頭皮がかゆいときの対処法を病気別に解説(2)」はこちら。
取材・文/高橋星羽(デコ)
根木 治(ねぎ・おさむ)先生
順天堂大学医学部附属浦安病院皮膚科 准教授兼医局長。日本皮膚科学会専門医。アトピー性皮膚炎のかゆみについての研究を行い、医学博士号を取得。千葉生物学的製剤乾癬治療研究会の世話人も務める。2015年より現職。