年を重ねるにつれ、誰もが感じるのが視力の衰え。いわゆる「老眼」ですが、これは加齢によって目の中の奥の水晶体が老化することから発症するもので、45歳前後を迎えるころから、ならない人はいない症状です。その仕組みや最新の医療技術、また、老眼になってからの生活を少しでも快適に送る方法などを、みなとみらいアイクリニック主任執刀医でクイーンズアイクリニック院長の荒井宏幸先生にお聞きしました。
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左右の見え方に差をつけてピントの合う距離を拡大
身近な老眼対策に「モノビジョン」という方法があります。これは、40歳代から50歳代の老眼初期の人におすすめする方法。特殊なレーザーを角膜に照射することによって、片目は遠くにピントを合わせ、もう一方の目はそれよりも少し近くにピントを合わせ、近くが見やすくなるようにします。
つまり、片目を軽い近視の状態にして左右の見え方に差をつけるのです。これにより、ピントの合う距離を広げて、低下してきたピント調節力をカバーします。初めのうちは左右の見え方の差に違和感を覚えることもありますが、慣れるまで早ければ1カ月ほど。3カ月も経つと、脳が左右の目の違いに順応して、両目で遠くも近くも自然に見えるようになります。
ただし、遠くのものと近くのものをそれぞれ片目で見ていることになるので、遠くを見る車の運転時や近くを見るデスクワークなどでは、片方の目に負担がかかり、目が疲れやすくなることも。メガネでのサポートが必要な場合もあります。また、どうしても左右の差に慣れないと言う人もいます。
もしコンタクトレンズを使用している場合は、片方のレンズの度を少しだけ弱めることから始め、段階的に度数を変えていき、左右の見え方を体感していくのもいいでしょう。まずは眼科で相談してみてください。
コンタクトレンズでモノビジョンの見え方を使いこなせれば、その状態をレーシック手術で治療して、裸眼のモノビジョンにすることも可能です。
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取材・文/岡田知子(BLOOM)
荒井宏幸(あらい・ひろゆき)先生
みなとみらいアイクリニック主任執刀医、クイーンズアイクリニック院長、防衛医科大学校非常勤講師。1990年、防衛医科大学校卒業。近視矯正手術、白内障手術を中心に眼科手術医療を専門とする。米国でレーシック手術を学び、国内に導入した実績から、現在は眼科医に対する手術指導、講演も行っている。著書に『「よく見える目」をあきらめない 遠視・近視・白内障の最新医療』(講談社)、『目は治ります。』『老眼は治ります。』(共にバジリコ)ほか。