自分自身をよく知ることこそよい人間関係の第一歩/枡野俊明

pixta_23679812_S.jpg職場、恋愛関係、夫婦関係、家族、友人...。毎日自分以外の誰かに振り回されていませんか?

"世界が尊敬する日本人100人"に選出された禅僧が「禅の庭づくりに人間関係のヒントがある」と説く本書『近すぎず、遠すぎず。他人に振り回されない人付き合いの極意』で、人間関係改善のためのヒントを学びましょう。今回はその第14回目です。

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前の記事「人間関係の「距離感」は禅の庭から学ぶことができる/枡野俊明(13)」はこちら。

 

本質を知るために地心を読む

人間関係はあらためていうまでもなく、「自分」と「相手」があって成り立ちます。ほどよい距離感を摑むには、相手の言動ばかりを考えるのではなく、まず、自分がどんな人間であるかを把握しておくことが大切です。むしろ、それがわからないと距離感のはかりようがないのです。

あなたは自分自身のことをよく知っていますか?わかっているようで、わかっていないのがじつは自分のこと。私にはそんな気がします。

「禅の庭」をつくるときには、まず、その敷地がどんなものであるのかを正しく見きわめることが出発点になります。敷地の特性を知るということですね。西洋の庭づくりの多くは、敷地を平らにならし、そこに作家が思い描くイメージをつくり上げていく手法がとられています。ですから、敷地の特性はあまり意識されません。

一方、「禅の庭」は敷地に傾斜があればその傾斜を活かすことを考えますし、樹齢を経た木があればそれを残すことを念頭に置きます。敷地の特性は、長い年月にわたる自然の営みの結果、そこにあらわれているものですから、人為的に変化させることをできるかぎり排そうとするのです。

禅にある「自然との共生(ともいき)」という考え方です。

敷地の特性を知ることを「地心を読む」といいます。自分を知ることは、ちょうどそれにあたります。性格、気質、言動の傾向、長所、短所......。"読む"べき自分の本質はいくらでもあります。

高度に情報化され、世の中の流れのスピードが速くなっている現代は、誰もが忙しいということもあって、じっくり自分を見つめるということが、少なくなっているのではないでしょうか。

つまり、自分を読むことを忘れている。そのことと、人間関係が総じてギクシャクしたり、ストレスを感じたりして、他人に振り回されているように感じてしまうことは、けっして無縁ではないはずです。そんな時代であるからこそ、自分を知るという人間関係づくりの基本ともいうべき出発点に立ち戻る必要があることを最初にお伝えしたかったのです。

 

多方向から自分を見る

「禅の庭」づくりで敷地の特性を見きわめる場合、私は敷地をくまなく見渡すだけではなく、一度敷地を出て外から見たり、近くにビルなどがあれば、そこに登って上から敷地を眺めたりすることもあります。そうすることで、敷地のなかを歩くだけではわからなかった特性が見えてきたりするからです。

この手法は自分を知るときにも使える、いや、ぜひ使ってほしいと思うのです。人は「自分にはこんな傾向がある」と考えていると、なかなかそこから抜け出せないところがあります。つまり、一面的に自分を見てしまいがちなのです。

たとえば、「自分はちょっと気が短いところがある」と考えている人は、おそらくその傾向を短所として捉えるのではないでしょうか。しかし、視点を外側に置いて、腹が立つ状況を検証してみると、ほかに見えてくるものがあるかもしれません。

「そうか、怒りが湧いてくるのは、いつも道理に合わないことに対してなんだな。不条理な発言、卑怯(ひきょう)なふるまい、身勝手な考え方......。そんなものが自分をイライラさせるんだ」もし、そうであれば、やたらに腹を立ててばかりいる単なる短気とは違うのではありませんか。道理を重んじる、正義感が強い、といった特性が腹を立てさせているということでしょう。

それらは短所ですか?
そうではないでしょう。むしろ、長所といっていい資質、特性なのではないでしょうか。

あるいは、「自分はなかなか物事の判断が下せない」と考えている人。その方向からだけ見れば、判断力、決断力に欠けるということになるわけですが、視点を転じれば、何ごとに対しても慎重に対応する、判断や決断の前にじっくり考える、という特性をそこに発見できるということになるかもしれません。

一事が万事です。ほんとうの自分を知るには、さまざまな方向、多方向から自分を見ることが必要なのです。

 

次の記事「寝る前の「30分の儀式」で自分らしさを取り戻す/枡野俊明(15)」はこちら。

枡野俊明(ますの・しゅんみょう)

1953年、神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺住職、多摩美術大学環境デザイン学科教授、庭園デザイナー。大学卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。2006年「ニューズウィーク」誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。主な著書に『禅シンプル生活のすすめ』、『心配事の9割は起こらない』(ともに三笠書房)、『怒らない 禅の作法』(河出書房)、『スター・ウォーズ禅の教え』(KADOKAWA)などがある

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『近すぎず、遠すぎず。』
(枡野俊明/KADOKAWA)


禅そのものは、目に見えない。その見えないものを形に置き換えたのが禅芸術であり、禅の庭もそのひとつである。同様に人間関係の距離感も目に見えない。だからこそ、禅の庭づくりに人間関係のヒントがある――「世界が尊敬する日本人100人」に選出された禅僧が教える、生きづらい世の中を身軽に泳ぎ抜くシンプル処世術。

この記事は『近すぎず、遠すぎず。他人に振り回されない人付き合いの極意』からの抜粋です

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