職場、恋愛関係、夫婦関係、家族、友人...。毎日自分以外の誰かに振り回されていませんか?
?世界が尊敬する日本人100人"に選出された禅僧が「禅の庭づくりに人間関係のヒントがある」と説く本書『近すぎず、遠すぎず。他人に振り回されない人付き合いの極意』で、人間関係改善のためのヒントを学びましょう。今回はその第1回目です。
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私はこれまで国内外を問わず、たくさんの「禅の庭」のデザイン、作庭に携わってきました。その作業を通して、次第にある一つの気づきを得ました。それは、「禅の庭」づくりと人間関係づくりには、共通点がとても多いということです。
「禅の庭」づくりの考え方は、人と人が関係を結ぶときにそのまま応用することができますし、「禅の庭」づくりの技法は人間関係にも存分に活かすことができるのです。
その応用、活用の具体的な方法はのちほど展開していきますが、その前にここではまず、「禅の庭」について基本的なことをお話ししたいと思います。
「禅の庭」とは何か。
それをひとことでいえば、絶対的真理を身体で体得する修行に励み、自らを空(くう)じることができたときにはじめて形となって「禅の庭」が完成する、ということです。それは「禅の美が表現された空間である」という表現をしてもいいでしょう。
では、禅の美しさはいったいどこにあるのでしょう。
これに関しては、京都大学で教鞭をとっておられた哲学者、仏教学者の故・久松真一さんが七つに分類して説明しています。
ちなみに、久松さんはずっと参禅を続けておられ、禅についてとても造詣の深かった方です。
久松さんが七つに分けた禅の美は、「不均斉」「簡素」「枯高」「自然(じねん)」「幽玄」「脱俗」「静寂」です。
「禅の庭」にはこれらが調和のなかで一つに溶け合って表現されています。それが「禅の庭」の凜とした佇まい、清々しい空気感をつくり出しているのです。
それでは、これから七つの美それぞれについて、私なりに詳しく解説をしていきたいと思います。
次の記事「「不均斉」「簡素なもの」に禅の美が宿る/枡野俊明(2)」はこちら。
1953年、神奈川県生まれ。曹洞宗徳雄山建功寺住職、多摩美術大学環境デザイン学科教授、庭園デザイナー。大学卒業後、大本山總持寺で修行。禅の思想と日本の伝統文化に根ざした「禅の庭」の創作活動を行い、国内外から高い評価を得る。2006年「ニューズウィーク」誌日本版にて「世界が尊敬する日本人100人」にも選出される。主な著書に『禅シンプル生活のすすめ』、『心配事の9割は起こらない』(ともに三笠書房)、『怒らない 禅の作法』(河出書房)、『スター・ウォーズ禅の教え』(KADOKAWA)などがある
『近すぎず、遠すぎず。』
(枡野俊明/KADOKAWA)
禅そのものは、目に見えない。その見えないものを形に置き換えたのが禅芸術であり、禅の庭もそのひとつである。同様に人間関係の距離感も目に見えない。だからこそ、禅の庭づくりに人間関係のヒントがある――「世界が尊敬する日本人100人」に選出された禅僧が教える、生きづらい世の中を身軽に泳ぎ抜くシンプル処世術。