テレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?
だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。
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「いじめ」や「パワハラ」も快感ホルモンに支配されている
一時期話題になったベッキーさんやそのお相手も、奇跡の確率で同じ時代に生を享(う)け、そして出会い、芽生えた愛だったかもしれません。本当のところはわからないのです。「愛の始末」は当事者たちで解決するしかないのです。にもかかわらず、嫉妬心が強い他人がすべてを悪意の対象にしてしまう。なんだか寂しいなと思います。
それはどんどんエスカレートし、誰かの小さな不幸だけでは快感を得られずに、数多くのより大きな不幸のニュースを知りたくなっていく──。心に強い痛みを感じている人は、その痛みを軽減するために、他人の不幸を見て喜ぶだけでは飽き足らず、不幸そのものをつくり上げてしまうことがあります。ときにはそれが犯罪につながりかねません。
いじめやパワハラなんていうものも、自分の心の痛みを和らげるために、他人を不幸にして喜んでいる例なのかもしれません。
ゴシップが好まれる日本はあぶない
10人に1人がうつ病とその予備軍と言われ、毎年2万数千人が自殺する日本社会。人間関係のストレスが増大し、集団のなかでの妬み、嫉妬、ライバル心などが昂こうじるあまり、いじめや仲間はずれ、足の引っ張り合いなど、集団にとって決してプラスにならない負の行動をしているのではないでしょうか?
そして人の不幸を探したり、人の不幸をつくり出しては、自分を慰めている......。ゴシップニュースが人気の日本社会を、平和な世界と思ってはいけません。人の不幸は蜜の味という空気が流れている日本は、危険な状態にあると考えたほうがよいでしょう。
幸せホルモンが世界を変える
こんな世のなかを少しでも変えてくれる可能性がある、〈セロトニン〉の話をしましょう。セロトニンは気持ちを安定させ、痛みや不安を抑えて胃腸の働きを整える「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質です。
このセロトニンが十分に働かないと、長い目で物事を考えたり、楽観的に考えたりすることができず、衝動的に学校や会社をやめたり、離婚したり、ときには自殺してしまうこともあります。うつ病の患者さんは、このセロトニンがうまく働かないことで、不安や衝動的な行動を引き起こすことがわかっています。
※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら。
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1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。
(鎌田 實/KADOKAWA)
社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!