花粉症の人にとって、春先はつらい症状に悩まされる季節。花粉症は、花粉によって 起こされるアレルギー疾患で、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどの症状が現れます。
日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学教授で、花粉症治療、特に舌下免疫療法の研究・治療に当たっている大久保公裕先生に、その原因などをお聞きしました。
前の記事「花粉症とアレルギー性鼻炎の違いって?/花粉症最新治療(2)」はこちら。
タイプ別・花粉症の治療の選び方(目安)
●つらい症状をとりあえず和らげたい
⇒薬物療法
●副作用などで薬が使えない、ワンシーズンだけでも鼻づまりを治したい
⇒レーザー手術
●スギ花粉症とは別の花粉症がある、ダニやハウスダストなどにアレルギーがある
⇒皮下免疫療法
●スギ花粉のみにアレルギーがあり、完全に治したい
⇒舌下免疫療法
【治療その1 薬物療法】
花粉情報が入ったらすぐに!
自分に合った薬で早期に症状を抑えます
花粉症の薬には多くの種類があり、作用や副作用、効果が現れるまでの期間が異なります。
担当医は、患者に強く現れている症状や程度、生活スタイルなどに応じて使い分けたり組み合わせたりして処方します。
花粉症の薬の主流は、アレルギー症状を引き起こすヒスタンの放出を抑える抗ヒスタミン薬です。昔からある第一世代の抗ヒスタミン薬は、眠気や口の渇きなどの副作用が出やすいのが難点でした。こうした副作用が少なく、効果も強いのが、第二世代の抗ヒスタミン薬です。
大久保先生によると、「第二世代の抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬は、花粉飛散予測日の情報が入ったとき、あるいは花粉症の症状が少しでも現れた時点で使い始めると、花粉の飛散量が多くなった時期でも症状を軽くすることが期待できます」。
最近では、医療機関で処方される「アレグラ」や「アレジオン」などの第二世代の抗ヒスタミン薬と同じ作用を持つ「スイッチOTC」と呼ばれる市販薬が薬局で購入できるようになりました。薬局の薬剤師に自分の症状を伝えて相談し、正しく使うことが大切です。
◆症状別・医療機関で処方される主な花粉症の薬
[くしゃみ・鼻水には]
・抗ヒスタミン薬、
・マスト細胞安定薬(ケミカルメディエーター遊離抑制薬)
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンというアレルギー症状を起こす化学伝達物質の放出を抑える内服薬。マスト細胞安定薬は、マスト細胞からヒスタミンが放出されるのを抑える内服薬。
[くしゃみ・鼻水・鼻づまりには]
・鼻噴霧用ステロイド薬
花粉症の鼻の症状全般に効果がある。スプレータイプで、鼻の中に噴霧する。
[鼻づまりには]
・抗ロイコトリエン薬
ロイコトリエンという鼻づまりを起こす原因物質を抑える内服薬。
[目のかゆみには]
・点眼薬
主に抗ヒスタミン作用のある点眼薬を使用する。
薬物療法のポイント
●内服薬、点鼻薬、点眼薬がある。
●症状や重症度により、使い分けたり組み合わせたりする。
●患者によって効果や副作用の現れ方が違う。
●医療薬と同じ成分が含まれた市販薬もある。
次の記事「鼻づまりが強い&花粉症の薬が効かない人におすすめ。レーザー手術/花粉症最新治療(4)」はこちら。
取材・文/髙森千織子 イラスト/やまだやすこ
大久保公裕(おおくぼ・きみひろ)先生
日本医科大学大学院医学研究科頭頸部・感覚器科学教授。日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科部長。日本医科大学大学院耳鼻咽喉科修了。米国立衛生研究所(NIH)に留学後、日本医科大学医学部准教授を経て現職。花粉症治療、特に舌下免疫療法の研究・治療に当たっている。