男性にも多い高齢者の便秘。その原因と解消法を探る

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便秘というのは、若い女性の悩みという印象が強いかもしれない。しかし実際には、高齢になるほど、男性も便秘になるリスクが高くなり、75歳以上で便秘に悩む人は男性と女性の差が無くなるという。「たかが便秘」と思い、何も対処をしない人もいるかもしれないが、実は身体的にも精神的にも様々な悪影響があるという。今回は高齢者の便秘について、その原因と解消法も含めてお伝えしよう。

 

原因は3つ

〈体の衰え・食事量の減少・薬の副作用〉
厚生労働省による平成22年国民生活基礎調査によると、便秘で悩む人の数は高齢になればなるほど増えていくことがわかる。とくに、若い頃は男性よりも女性が便秘になりやすいが、年齢を重ねるにつれて男女差が無くなってゆく。

高齢者の便秘の原因は大きく分けて3つあり、それは体の衰え、食事量の減少、薬による副作用だ。ひとつずつ解説しよう。

1つめの体の衰え。歳を重ねるとどうしても筋力が衰える。排便の際にはいきむ必要があるが、腹筋が衰えてその力が低下してしまう。なかなかいきむことができず、排便に時間がかかってしまうと、腸が便の水分を吸収して硬くなり、さらに排便が困難になってしまう悪循環となる。

また、体の衰えは筋力だけではない。自立神経も衰え、それが便秘を引き起こしてしまうのだ。大腸のぜん動運動が弱まってしまい、便を送り出しにくくなってしまう。また、直腸の感覚も弱くなり、便が下へ降りてきているにもかかわらず、便意を感じにくくなってしまうこともある。

自律神経には筋肉を緊張させる「交感神経」と、リラックスをさせる「副交感神経」がある。それぞれがバランスよく働いて、トイレに入るまでは筋肉を収縮させて排泄を我慢し、トイレに入ったらゆるめて排便をする。この神経の働きが弱まってしまったり、バランスが崩れてしまうと排便に問題が生じてしまうのだ。

2つめの食事量の減少というのも便秘の原因となる。高齢になると筋力が衰え、どうしても運動量、活動量が低下してしまう。すると食欲も減退して食事量も減ってしまう。接種カロリーが低下すると、ますます体を動かすことが億劫になり、さらに筋力も衰える悪循環である。食事量が減ると、その分便の量も減り、排便の習慣が乱れて便秘の原因となってしまいます。

腸を正常に働かせるためには「食事をする」という刺激そのものも必要である。とくに「朝食を作るのは面倒だ」といって朝食を取らない人もいるだろう。よく言われることであるが、朝食は規則正しい生活を送るために大切な働きを持っている。朝目覚めた後の一番の食事によって体は目覚め、活動を始める。腸も同じで、朝食を取らない生活を送っていると腸の働きが弱まってしまう。

また、食事量が減ると、それに伴って水分摂取量も減ってしまう。水やお茶などの飲み物を、コップについでゴクゴクと飲むことだけが水分摂取ではない。実は、食事から自然と体に入る水分量も大切なのだ。水分摂取量が減ると便が硬くなり、排便がより困難になってしまう。とくに高齢者は「喉が渇く」という感覚も衰えたり、頻尿や尿漏れなどを気にして水分を控えがちになってしまうこともあるので注意が必要だ。

原因の3つめ、薬による副作用について。持病を持っていて、常時薬を服用している人の場合、その薬の副作用として便秘になることもある。とくに咳止め、坑うつ、抗生物質、高血圧の薬などは便秘を起こしやすいとされている。ただ、これらの薬を使用して便秘になったからといって、自己の判断で薬の使用を中止したり、あるいは便秘薬などを使用するのは良くない。必ず主治医に相談をし、適切な処置をしてもらうようにすること。

 

では次に、高齢者の便秘の解消法についてまとめてお伝えしよう。

1. 体を動かす
ストレッチ体操やウォーキングなどを毎日続けること。無理をする必要は無く、炊事や選択などの家事をこなし、散歩や買い物のため外出するなど、日常的な活動を行う程度でも充分である。

2. 食生活の見直し
まずは水分をしっかりと補給すること。喉が渇いたと感じなくても、こまめな水分補給を心がける。食事は毎日3食規則正しく採るようにする。とくに食物繊維を多く含む食品や発酵食品を積極的に採ると良い。

3. 便意が無くてもトイレに行く習慣をつける
食事と同じように、毎日規則正しく排便することが理想であるが、歳を重ねると便の量自体が減ることにより、排便の回数も少なくなる。すると便意を感じにくくなることがある。そこで、たとえ便意が無くても、ある程度決まった時間帯にトイレに入る習慣をつける。トイレに入ると反射的に便意を催すように、体に覚えさせると良い。

 

便秘解消体操

では最後に、便秘解消のための体操を紹介しよう。いずれも布団の上で寝たまま行うことができる。

1. 腹部「の」の字マッサージ
仰向けに寝た状態で、腹部に大きく「の」の字を書くようにやさしくマッサージをする。おへそに手のひらをあて、そこからへその下へ、そして腹部全体を時計回りに回転させるように撫でてマッサージする。時計の中心から6時、9時、12時、3時、6時の方向へ動かす。

2. ひざ抱え
仰向けに寝た状態から両ひざを抱えて体を丸める。そしてお尻を浮かせるようにして反動をつけ、ゆりかごを揺らすように、体全体を縦に揺り動かす。両ひざを抱えるのが難しければ肩ひざずつでも良い。

3. 下半身をねじる
仰向けにねたまま両腕を広げて上半身が動かないように、とくに肩が床から浮かないように支える。次に両ひざを90度立てて、立てたひざを右へ、左へ交互にゆっくりと倒し、下半身をねじる。

 

「便秘は命に関わるような病気ではない」と放置してしまうと、慢性化してQOL(生活の質)を下げてしまったり、体や心に様々な変調を来たすこともある。規則正しい生活習慣で健康的な毎日を過ごしていただきたい。(老友新聞社)

 
この記事は『日本老友新聞』に掲載の情報です。

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