アルツハイマー型認知症の病状が進行し、混乱が強くなっているのかもしれません
暴言や暴力は、家族や介護者にとって大きな悩みのタネになります。
暴言・暴力は、さまざまな要因が重なって起こりますが、特に起こりやすい時期があります。
それは、アルツハイマー病がやや中高度にまで進行したとき、専門的には、「FAST(Functional Assessment Staging Test)」と呼ばれるアルツハイマー型認知症の進行を測る指標で6に分類される時期(FAST6)です。
この時期は、衣類の着脱が苦手になるほか、入浴や排泄にも介助が必要になり、言葉の理解も困難になってきます。
マンガは、そのような状態の中で、ご家族が着替えの介助をしようとしている場面です。
ご本人は、ご家族から呆れたようなため息をつかれ、突然、服を脱がされようとしたと感じています。
そのために、戸惑い、傷つき、思わず暴言・暴力につながってしまったのでしょう。
ご本人は理由もなくたたいたり、暴れたりしたわけではありませんが、介護する側にとっては突然、暴言を吐かれて暴力を振るわれてしまった状態です。
介護をがんばっている人ほど、たたかれたり暴言をいわれたりしたらつらいと思います。
とはいえ、ご本人も病状が進んで混乱が強くなり、自尊心が傷つきやすくなっていることは心に留めておいてください。
この時期は、認知症の人は、状況を理解するために、相手の表情や雰囲気、口調に敏感になります。
接するときは笑顔や優しい口調のほか、「この説明で伝わるか、この言葉でいいか」といったような細かな気配りを心がけてください。
また、どのようなきっかけで暴言・暴力が起こったのかを振り返り、ご本人が混乱しやすい事柄には、よりていねいなサポートを行いましょう。
認知症は、調子のいい日も悪い日もありますが、根本的な改善は難しい病気です。
昨日できたことが今日できるとはかぎらず、むしろ、できなくなることのほうが多くなります。
「いずれは進行する病気」という心がまえを持ち、寛容になることも大切です。
対応のポイント
●暴言・暴力が増えたときは病状が重症化する入り口の時期かもしれず、ご本人は相手の表情や雰囲気、口調に敏感になっているため、穏やかな笑顔や口調、細かな気配りを心がけよう。
●認知症については、「いずれは進行する病気」という心がまえを持とう。
【次回】この臭い・・・ウソでしょ!? 父が服に便をこすりつけた理由/認知症の人が見ている世界
認知症ケアに携わってきた著者が、実際に接してきた中で気づいたケーススタディがマンガでわかりやすく解説されています