ままならない体をどうにかして動かそうと必死でがんばっています
認知症にはいくつかのタイプがありますが、レビー小体性認知症と呼ばれるタイプでは、立つ・座るといった動作や、歩く速度が緩慢になるといった運動機能の低下が顕著に現れます。
これは、レビー小体性認知症で見られるパーキンソン症状の一つで、専門的には「鉛管現象(鉛管様強剛)」と呼ばれます。
この症状が起こると、体の中に鉛の管が通っているかのように体の各関節が硬くなり動かしづらくなってしまいます。
そのため、立つ・座るなどの日常動作はもちろん、体の向きを変えたり、バランスを保ったりすることが難しくなってしまうのです。
ちなみに、首を傾けてあごを出したような姿勢になるのが特徴です。
動作が緩慢になると、周囲の家族はつい「怠けているのではないか」「どうしていうとおりに動いてくれないのか」とイライラしてしまうものです。
しかし、ご本人は「家族に迷惑をかけてはいけない」「早く準備をしなければ」とままならない体を全力で動かそうとがんばっているのに体がいうことを聞いてくれないのだから、とても疲れてしまいます。
しかも、パーキンソン症状があると、言葉が出づらいこともあるので、そうした場合は自分の苦痛をうまく相手に伝えることもできません。
これは、大変つらいことです。
こうしたことから、本人の動作が緩慢になっても、決して急かしたり服を引っぱったりしないようにしましょう。
認知症でない私たちは、意識せずとも立つ・座る・歩くなどの動作をあたりまえにこなせますが、そのために認知症の人の心情を理解することが難しくなっています。
認知症の人は、「あたりまえにできること」ができなくなるからこそ苦しいのです。
ご本人が動いてくれたことに、まずは感謝の気持ちを持ちましょう。
調子のいいときは、いっしょに外出して散歩をすると、衰えを防ぐことにつながります。
そのさい、「1、2、1、2」というと、パーキンソン症状のある人は、足が前に出やすくなります。
対応のポイント
●全力で体を動かそうとしていることに感謝の気持ちを持とう。
●調子がいいときは、心身の衰えを防ぐためにも、散歩をするなどして、いっしょに外出する機会を増やす。そのさい、「1、2、1、2」といって足を前に出すと、ご本人が歩きやすくなる。
【次回】ええ!? 壁に向かって話かける母...なんで?/認知症の人が見ている世界
認知症ケアに携わってきた著者が、実際に接してきた中で気づいたケーススタディがマンガでわかりやすく解説されています