『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』 (和田 一郎/KADOKAWA)第6回【全7回】
仕事、人間関係、あるいは「これからの人生」へのなんとなくとした不安......。あなたが抱えるその「生きづらさ」の根源には、子ども時代の逆境体験、ACEs(エース)が潜んでいるかもしれません。子ども時代に家庭内で感じた寂しさや傷つき、張り詰めた空気などの「過去の体験」が、大人になった現在の心や体、そして日々の選択に、知らず知らずのうちに影を落としていることがあるのです。本書『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』(KADOKAWA)は、近年のデータサイエンスで明らかになった事実をもとに、ACEsがどのように現在の心身、そして人生の選択に影響を与えているかを解き明かします。今回はこの書籍の中から、少し肩の力を抜いて、「これからの人生をラクに生きるためのヒント」をお伝えします。
※本記事は和田 一郎 (著)による書籍『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』から一部抜粋・編集しました。

「家族依存社会」という日本社会の構造とACEs(小児期逆境体験)の結びつき
皆さんは、日本をどういう国だと考えているでしょうか。
さまざまな切り口があると思いますが、本書の視点で見ると、日本社会は「家族依存社会」ということができそうです。
「家族依存社会」とは、「子育てや介護、生活の保障といった重要な役割を、公的な制度よりも家族が担うことを前提にしやすい社会」を指しています。
福祉政策の研究では、その特徴として、日本は社会支出が相対的に抑えられる一方、雇用慣行や家族・地域といった一次的なつながりが、結果として生活保障の一部を代替してきた、と述べています。
ここからACEsとの結びつきを考えるポイントは、家族に期待される役割が大きいほど、家族の中に「負荷」が集中しやすいことです。
たとえば、収入が不安定、住まいが不安定、相談相手がいない、親が心身の不調を抱えている、といった状況が重なると、養育のストレスが高まり、虐待やネグレクトなどのリスクが上がりやすいことが指摘されています。つまり、ACEsは「家庭の中で起きた出来事」として捉えやすい一方、家族に負荷が集まりやすい制度・社会環境と結びついて起きやすくなる、という見方もできます。
さらに、日本の子ども政策は「家族」「家庭」を暗黙の前提に置きやすく、その前提が強いほど、家族の外にある支え(公的サービスや地域資源)につながりにくくなり、問題が家庭内に閉じ込められやすい状況になります。
この「家族に負荷が集中し、外につながりにくい」という状況は、日本のデータを用いた実証研究でも部分的に裏づけられています。
たとえば、親世代の子ども期のネグレクト経験が、現在の貧困を介して、その人の子どもへの身体的虐待の発生と結びつく経路が示されており、貧困やストレスが世代を超えて影響しうることが示唆されています。
つまり、「家族依存社会」という構造は、家族内に負荷をため込みやすく、ACEsのリスク要因を重ねやすい条件となりえます。この状況を改善するためには、「生きづらさ」を個人や家庭だけの問題として終わらせず、家族支援を制度として充実させる(家族で抱え込ませない)という理解が重要になります。








