チェックシートで知る「幼少期の傷つき」と10の家庭環境。大人になっても残る影響

『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』 (和田 一郎/KADOKAWA)第3回【全7回】

仕事、人間関係、あるいは「これからの人生」へのなんとなくとした不安......。あなたが抱えるその「生きづらさ」の根源には、子ども時代の逆境体験、ACEs(エース)が潜んでいるかもしれません。子ども時代に家庭内で感じた寂しさや傷つき、張り詰めた空気などの「過去の体験」が、大人になった現在の心や体、そして日々の選択に、知らず知らずのうちに影を落としていることがあるのです。本書『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』(KADOKAWA)は、近年のデータサイエンスで明らかになった事実をもとに、ACEsがどのように現在の心身、そして人生の選択に影響を与えているかを解き明かします。今回はこの書籍の中から、少し肩の力を抜いて、「これからの人生をラクに生きるためのヒント」をお伝えします。

※本記事は和田 一郎 (著)による書籍『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』から一部抜粋・編集しました。

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あなたはいくつ当てはまる? ACEs(小児期逆境体験)となる10の体験

初期の研究では、現在でも使われる標準である「家庭の中で起きる10種類の出来事」が、逆境的小児期体験として整理されました。

(1)情緒的虐待
(2)身体的虐待
(3)性的虐待
(4)身体的なネグレクト
(5)情緒的なネグレクト
(6)DV
(7)家族の物質依存
(8)家族の精神疾患
(9)両親の離婚・別居
(10)家族の逮捕・収監

これらは1項目1点とされ、最低0点〜最高10点として計算されます。
これらを大きく分けると、次の2つのグループに分かれます。

1.虐待グループ
ACEsのなかの「虐待グループ」は、主に(1)情緒的虐待、(2)身体的虐待、(3)性的虐待の3つを指します。子どもに向けられる「情緒的虐待」とは、言葉や態度で心を傷つけ続けることです。

たとえば、毎日のように怒鳴られる、「お前なんかいらない」「生まれてこなければよかった」と否定され続ける、馬鹿にされる、恥をかかされる、脅されるといった状態が長く続くことです。

たとえ一度も殴られていなくても、こうした言葉や態度だけで、子どもは自分には価値がない、世界は危険だ、という感覚を深く植えつけられてしまいます。

「身体的虐待」は、叩く、蹴る、突き飛ばす、物で殴る、火傷させる、首を絞める、激しく揺さぶるなど、体に直接の痛みや傷を与える行為です。

「しつけ」の名目であっても、繰り返し行われてけがをする、あるいはけがをしてもおかしくないほど強い力が加えられている場合は、身体的虐待とされます。

「性的虐待」は、大人や年長の子どもが、子どもに対して性的な行為をする、あるいは強いることです。性交だけでなく、体を触られる、裸を見せられる、ポルノを見せられる、性的な写真を撮られるなども含まれます。子どもは立場上「嫌だ」と言いにくく、また何が起きているか理解できない年齢であることも多いため、強い恐怖と混乱、恥や罪悪感を1人で抱え込むことになります。

この3つの虐待は、別々に見えるようでいて、「子どもにとって安全であるはずの家庭や大人が、恐怖として子どもに認識される」という共通点を持っています。本来なら守ってくれるはずの人から傷つけられる経験は、単なる「怖い出来事」を超えて、自分自身だけでなく、社会への信頼感を根本から揺るがします。そのため、研究ではこの虐待グループを特に重視し、成人後の心身の病気や生きづらさとの関連が詳しく調べられてきました。

2.ネグレクトグループ
2つ目のグループは(4)身体的なネグレクトと(5)情緒的なネグレクトです。ネグレクトは、日本の児童虐待防止法では虐待のうちの1つとして認識されていますが、項目は2つになります。

まず、身体的ネグレクトは、「子どもが生きていくために必要な基本的な世話が、長期にわたって十分に行われていない状態」を指します。

具体的には、次のような状態が続いているイメージです。
○ いつもお腹をすかせているのに、十分な食事を与えてもらえない
○ 季節に合った服がなく、冬でも薄着のまま放置されていたり、同じ服をいつも着させられる
○ 体調が悪くても病院に連れて行ってもらえない、子どもに病院に行ってはいけないと言う
○ 家の中が極端に汚かったり、ゴミだらけで衛生状態が悪い
○ 小さな子どもが長時間1人で留守番させられている

親に「虐待している」という自覚がない場合もありますが、結果として子どもが栄養不良や事故、病気などの危険にさらされる点に特徴があります。

研究では、「十分に食事を与えられなかった」「衣服が不足していた」「医療機関に連れて行ってもらえなかった」「世話をしてくれる大人がいなかった」などの項目が、身体的ネグレクトとしてACEsを調査する質問票に含まれます。

次に、情緒的ネグレクトは、「子どもの心のニーズに応えてくれる大人がいない、あるいは極端に少ない状態」です。

たとえば、次のような状態が長く続くことが多いです。
○ 悲しいとき、怖いとき、うれしいときに、気持ちを受け止めてくれなかった
○ 話しかけても、ほとんど無視される、適当にあしらわれた
○ 抱きしめられる、優しく声をかけられるといった、安心できる関わりがほとんどなかった
○ 親が常に仕事やスマホ、アルコール、恋人などに向き合っていて、子どもに注意を向けていなかった

表向きには「殴る・怒鳴る」といったわかりやすい暴力はありませんが、子どもは「自分の気持ちをわかってもらえない」「自分は大事にされていない」という感覚を深く抱きやすくなります。

ACE質問票では、情緒的ネグレクトを測定する際の補足として、たとえば、
「自分は家族にとって大切な存在だと感じられなかった」
「家族は互いを支え合っていなかった」
「家族が自分の気持ちを理解してくれるとは思えなかった」
といった項目を挙げています。

以上より、これら2つのネグレクト環境では、子どもは「他人を信じて頼る」という経験を積みにくくなります。そのため、大人になってからも人間関係で極端に距離を置きすぎる、あるいは逆にしがみつきすぎてしまうなど、その影響が対人関係の不安定さとして現れやすいことが報告されています。

虐待とネグレクトについては、「何かをされる」というより「されるべきことがされない」という点で性質が異なると言えます。しかしこの「されなかった」経験である身体的・情緒的ネグレクトも、情緒的・身体的・性的虐待と同じように、さまざまな健康問題のリスク上昇との関連が示されています。

特に、複数のACEsが重なるケース(つまり、点数が高い)では、虐待とネグレクト、家族の機能不全が混ざり合い、「安全な場所がどこにもない家庭環境」になっていることが少なくありません。

そのためネグレクトは「何もしていないから軽い」問題ではなく、「何もしないことで子どもが放置され、深刻な影響を受ける」と理解する必要があります。

この10項目に最近追加された項目があります。当初は「(11)その他」とされていたのですが、これによく該当する語句やキーワードが出てきたのです。それは、紛争や戦争のある地域や、学校での出来事です。

当初の10項目は、「家庭の中」の出来事が中心でした。しかしその後の研究で、家庭の外にある出来事も、子どもの脳や心身の発達に大きな影響を与えることがわかってきました。そのため、日本でも家庭内だけでなく、学校や地域、社会環境を含めた幅広い逆境体験をACEsとして扱う流れが強まっています。

たとえば、日本は自然災害が多い国ですが、そうした被害を受けた経験や、「学校でのいじめ」「子どものころの大きな経済的困難(貧困)」「災害や大きな事故の経験」などがあげられます。これらを含め、現在では15項目からなる「拡張版ACEs」(ACE-J)などが用いられています。

 
※本記事は和田 一郎 (著)による書籍『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』から一部抜粋・編集しました。
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