脳神経外科医が解説!入浴中や移動中に「最高のアイデア」が生まれるメカニズム

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『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』 (菅原 道仁/アスコム)第2回【全7回】

「休む」というと、ただゴロゴロすることだと思っていませんか? 寝ても疲れが取れないのは、あなたが「疲れの正体」を知らないからかもしれません。書籍『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』(アスコム)では、脳神経外科医の菅原 道仁氏が、長年の研究からたどり着いた「疲れを取るための技術」を分かりやすく解説しています。ご自身の体の状態を理解することから始め、その時のあなたに合った「正しい回復法」を実践するだけで、少しずつ体が軽くなっていくのを実感できるでしょう。今回はこの本の中から、だるさや重さから解放され、毎日をいきいきと過ごすためのヒントをご紹介します。

※本記事は菅原 道仁 (著)による書籍『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』から一部抜粋・編集しました。

DMNを活性化させて脳疲労を防止

大前提として推奨しておきたいことがあります。それは、頭の中をなるべく無意識にして、ぼーっとする時間をつくることです。

私たちが意識的に脳を使おうとすると、脳の特定の部位だけが活性化し、脳のエネルギーもそこに集中することになりますが、それは効率のいい脳の使い方、正しい脳の使い方とはいえません。

一方、ぼーっとしているときは、寝ているときと同様に、脳全体が無意識のうちに活発に働きます。じつはこのとき、アイデアやひらめきが生まれやすいといわれているのです。

この現象をもたらすメカニズムのことを、アメリカのワシントン大学セントルイス校の神経学者マーカス・レイクル教授は「デフォルト・モード・ネットワーク(DefaultMode Network :以下DMN)」と名付けました。

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DMNには、内側前頭前野、後帯状皮質、下頭頂小葉、楔前部などの脳の領域が含まれ(【図】参照)、DMNが活性化されると、新たなアイデアがわくだけでなく、過去の経験が整理されて情報が組み立てやすくなり、記憶や思考がうまくまとまるようになります。

無意識化の脳の活動なので、自動車が停止していてもエンジンは止まらずに動いている、アイドリングの状態に置き換えるとわかりやすいでしょう。

イギリスの科学者アイザック・ニュートンは、物思いにふけっているときに、木になっていたリンゴがたまたま落ちるのを見て、万有引力の法則の着想が生まれたといいます。

「なぜリンゴは落ちるのか」を意識的に考え、脳の一部をフル稼働させて発見に至ったわけではありません。

また、入浴中や電車移動中に「曲や歌詞のいいアイデアが浮かんだ」というアーティストの話もよく聞きます。これらは、脳を意識的に使わない状態であり、DMNが活性化しているから起こることなのです。

DMNが活性化されると、脳内の情報整理をスムーズに行うことができ、さらには記憶力が定着するので、空いたキャパシティを有効活用できるようになります。それにより、脳のパフォーマンスが格段にアップすることはいうまでもありません。

それだけでなく、脳が余計な情報処理にエネルギーを使わなくて済むので、脳疲労の防止にもなります。忙しさに追われて心理的な余裕がないと感じている人は、そんなときこそ、あえてぼーっとする時間をつくってみてはいかがでしょうか。

デメリットも意識して「脳が疲れにくい人」を目指す

ただし、いいこと尽くめというわけではありません。デメリットもあります。じつは、安静時の脳活動の多く(推定60%前後)がDMN関連領域に割り当てられることがわかっており、DMNが活性化しすぎてその状態が長時間続くと、オーバーワーク気味になって歓迎できない事態をまねいてしまうのです。

注意力が散漫になったり、大切なことを一時的に忘れたりすることにもつながります。情報処理がスムーズに進みすぎたことにより、余計なことを考えてしまって、それが不安感を助長するケースもあるでしょう。

この状態を続けていると、脳に蓄積されているエネルギーが枯渇し、かえって疲労の原因になることもあります。

脳疲労がたまりにくい状態、疲れにくい状態にするためには、脳を正しく使うことが大事。これは間違いありません。そのために、ぼーっとする時間をつくって、DMNを活性化させることが効果的。これも合っています。

しかし、DMNが活性化しすぎて脳が疲れてしまっては本末転倒です。ぼーっとすることは大切ですが、ものには限度というものがあります。

上手にメリハリをつけて、脳が疲れにくい人になることを目指しましょう。

 
※本記事は菅原 道仁 (著)による書籍『働きすぎで休むのが下手な人のための 休息する技術』から一部抜粋・編集しました。
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