『「小さな私」の癒し方 幼少期の記憶で人生は9割決まる』 (心理カウンセラーmasa/KADOKAWA)第1回【全8回】
「なんだか生きづらい」「いつも同じようなことで悩んでしまう」と感じることはありませんか? もしかしたら、その原因は幼い頃の記憶にあるのかもしれません。書籍『「小さな私」の癒し方 幼少期の記憶で人生は9割決まる』(KADOKAWA)は、過去の経験、特に幼少期の記憶が、今のあなたの感情や行動に深く影響を与えていることを優しく解説します。「あの頃の小さな私」が抱えていた悲しみや不安、満たされなかった気持ちに気づき、理解することで、長年の心の痛みが少しずつ癒されていくはずです。より穏やかで自分らしい生き方を手に入れるためのヒントが詰まったこの本の中から、ありのままの自分を受け入れるための方法をご紹介します。
※本記事は心理カウンセラーmasa著の書籍『「小さな私」の癒し方 幼少期の記憶で人生は9割決まる』から一部抜粋・編集しました。
出会い
私は主婦の幸子(さちこ)、44歳。「"幸せ"な子」と書く。
でも、名前通りに"幸せ"なのかはわからない。特に最近は。
今はお昼の12時。パート先のレストランが最も忙しくなる時間だ。厨房でみんながバタバタしている中、「チッ」と大きな舌打ちが聞こえた。私の苦手なお局さんだ。
この人はいつも、みんなが嫌がる仕事を私に押し付け、ちょっとでも間違えると自分が教えた通りにやっていないと怒る。
今日も早足で私に近づくと、「今日は洗い物だけ担当して」と強い口調で指示した。
え、また私? なんで私ばっかり......。そう言いたかったが、私は「わ、わかりました......」と言ってうつむいた。
私の横にいた大学生のバイトが、「お局さん、今日はなんだかいつも以上にイライラしてるみたいですね」とつぶやく。
私は今日、ほんとうは休みのはずだった。朝、マネージャーから電話がかかってきて、「急な欠勤が出たので、出勤してくれないか?」と頼まれたのだ。ほんとうは家でやりたいことがあったのに、思わず「わかりました」と言ってしまった。
それなのに「ありがとう」の一言もなく、終わりのない洗い物の担当に。
「どうして、私ばかり......」、理不尽でくやしくて、涙がこぼれてきた。
3時になり、やっと洗い物から解放された。今日はもう、何をする気にもなれない。
パート先の悩みを夫に話しても、どうせつまらなそうに「ふぅん」と言うだけ、私の顔も見ないだろう。
2人の子どもたちも、私の話なんて聞こうともしない。
私のことをわかってくれる人なんて誰もいない。
私がいなくなっても、悲しむ人なんていないのかもしれない。
気持ちがどんどん沈んできて、行き場のない不満が心に渦巻く。
足早に歩く道の途中で、ふと神社の鳥居が目に入った。ここは確か何年も前に、子どもたちと初詣に来た神社だ。
ここなら誰もいなさそうだし、積もり積もった私の気持ちを吐き出すのにいい場所かもしれない。
気持ちを抑えきれずに、私は神社に入っていった。