『快腸大全 便秘外来医が3万人を診てわかった腸の新常識』 (水上 健/KADOKAWA)第4回【全8回】
テレビや雑誌などに多数出演する便秘・IBS(過敏性腸症候群)分野の第一人者・水上 健医師によれば、最近はリタイヤ後に便秘になる男性が増えているそうです。そうした患者の中には、下剤を服用しすぎたことで腸がダメージを受けたり、腸内環境や食事にこだわりすぎて便秘対策に疲れ果てている方も多いのだとか。先生が便秘外来で多くの患者の診療にあたることで分かった真実と、最新データに基づく正しい知識をまとめたのが書籍『快腸大全 便秘外来医が3万人を診てわかった腸の新常識』(KADOKAWA)です。今回はこの本の中から、30年来の便秘が治ったという報告もあったという「腸ゆらしマッサージ」についてご紹介します。
※本記事は水上 健著の書籍「快腸大全 便秘外来医が3万人を診てわかった腸の新常識」から一部抜粋・編集しました。
「腸ゆらしマッサージ」の手順
では実際にマッサージを始めてみましょう。まずは、腸ゆらしマッサージのやり方です。基本的な手順は次の3つです。さらに落下腸の疑いがある人は、手順4をプラスして行いましょう。
大腸のほかの部分もねじれている可能性はありますが、3つの手順で3か所だけ行うのには理由があります。先にお伝えしたように小腸に近い位置(上行結腸から横行結腸中央まで)のねじれは便がまだ固くなっていないので、便秘の原因にはなりません。ですから、刺激するのは主に下行結腸(手順①)、S状結腸(手順②)、横行結腸から下行結腸の曲がり角(手順③)の3か所だけで大丈夫なのです。ちなみに、食物は胃や小腸で消化されて液状になります。小腸は大腸以上に折れ曲がりねじれていますが、問題にならないのは中身が液状だからです。
マッサージのやり方
【手順1】下行結腸をゆらす→左腹部トントンマッサージ
【手順2】S状結腸をゆらす→下腹部トントンマッサージ
【手順3】横行結腸から下行結腸の曲がり角をゆらす→上体ひねりマッサージ
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落下腸の人はさらに
【手順4】落ちた腸全体を持ち上げる→腸持ち上げマッサージ
それぞれ次のようなポイントがあります。
【手順1】下行結腸をゆらす→左腹部トントンマッサージ
下行結腸は本来、背中にまっすぐ固定されているため問題にならないはずの場所なのですが、日本人の多くはここが背中に固定されないために曲がったりねじれたりしています。下行結腸の曲がりやねじれに便が引っかかることで便秘になりやすくなります。
【手順2】S状結腸をゆらす→下腹部トントンマッサージ
S状結腸はもっとも便が固くなっているという点で、問題になりやすいところです。日本人ではS状結腸の形が原因の「S状結腸軸捻転症」という腸捻転がしばしば見られます。「S状結腸軸捻転症」は西洋人ではほとんど見られません。
かつてお腹の上から「のの字」にマッサージすることで、詰まった便を流す「のの字マッサージ」という改善法がありました。ですが、そもそも腸は「のの字」の形をしていませんし、曲がったチューブを無理やりしごいても中身が出ないように、「のの字」にしごいても全く意味がありません。ゆらして便の引っかかりをなくして腸の力を補助してあげるのがポイントです。
【手順3】横行結腸から下行結腸の曲がり角をゆらす→上体ひねりマッサージ
横行結腸と下行結腸のつなぎ目は肋骨で覆われているので、指だと直接押すことができません。押してゆらす代わりに、体をひねることで肋骨の内側にある腸にゆさぶりをかけるのがこのマッサージです。体をゆらすことで、曲がり角をゆるめることができます。
【手順4】落ちた腸全体を持ち上げる→腸持ち上げマッサージ
落下した腸全体を、位置を戻すイメージで手で持ち上げます。逆立ちをしてレントゲン検査をしたところ、落っこちた腸が上がってきたと先にお伝えしましたが、腸は普段重力で落ちていても、ちょっとしたことで動かして、便を引っかかりにくくすることができます。マッサージを継続することで、多くの落下腸の患者さんの便秘が解消されています。
お腹を軽くたたくなどして腸をゆらすだけで、本当にねじれがゆるむのかと疑問に思われる方もいることでしょう。ですが、下のマッサージ前・後の写真を見れば、ねじれが解消されていることがおわかりいただけるはずです。
ゆらすと腸のねじれがゆるんでいく
マッサージ前
レントゲンで見た大腸の様子。矢印の箇所が、ねじれている部分。細くなっているため、腸が途切れているように見える。
マッサージ後
マッサージでねじれ部分をゆらすことによって、細くなっていた箇所が太くなった。ねじれ腸は外部からの刺激で簡単にゆるむことがわかる。