明日から8月。記録的な猛暑だった7月に引き続き、8月も暑い日が続くと予測されている。そうなると、我々高齢者にとって心配なのは熱中症である。今一度、熱中症について症状や予防対策についてまとめてお伝えしよう。
救急搬送の50%が高齢者
総務省消防庁の発表によると、2015年(5月から9月まで)の熱中症による救急搬送数は全国で5万5852人で、そのうち7月の救急搬送人員数2万4567人は、平成20年からの調査開始以降、過去最多となった。また、年齢別では高齢者の割合が最も多く、観測史上初めて全体の搬送数の50%を上回ったという。それだけ高齢者は熱中症に注意をしなければならないということであり、さらに今年、6~7月にかけての熱中症による救急搬送数の速報値は昨年を上回るペースで増えているので、まさに他人事ではなく、自分自身に降りかかることであると認識しなければならないということだ。
ここでひとつ、人間の体温調節機能について簡単にご説明しよう。
人間は「恒温動物」であり、たとえ気温が変化をしたとしても、個人差はあるものの、体温は36度~37度くらいに保たれている。これは自律神経の働きによるもので、暑い時には汗をかいて身体を冷却し、寒い時には身体を震わせて熱を発生させるなどして、体温を維持しているのだ。この体温維持に使われるエネルギーは、人間が食事をして摂取するエネルギーのうち、およそ75%も費やすほどと言われている。
ところが、気温があまりに高すぎる状態が長く続くと、この体温調節機能に障害が発生してしまう。また、汗をかきすぎて体内の水分が失われると、汗をかくこともできなくなり、やはり体の冷却に支障をきたしてしまう。こうして体温の調節ができなくなってしまう状態が熱中症である。
以下に、熱中症が起こりやすくなる原因をあげてみた。
・気温が高い・日差しが強い
・炎天下での激しい運動や重労働
これらは体温が上がりやすくなるため熱中症が起こりやすくなる。
・湿度が高い
・風通しが悪い
・水分の不足
汗が蒸発しにくい、あるいは汗をかけないため体温を下げにくくなる。
・寝不足など体調が万全でない
体温調機能がうまく働かなくなる。
これらの条件が重なれば重なるほど熱中症の危険が高まるので注意しよう。
症状は口の渇きから頭痛、吐き気、意識混濁など
では、熱中症になるとどのような症状がでるのか。重症度別に見てみよう。
〈軽度の症状〉
めまいや立ちくらみ、口の渇き、生あくび、筋肉痛や筋肉の痙攣(こむら返り)、ほてり感、顔色の変化(蒼白)など。
〈中等度の症状〉
頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、だるさ、脱力など。
〈重度の症状〉
意識の混濁、呼びかけても応答しない、体のひきつけ、歩行困難、体温や皮膚温度の上昇など。
このような症状が熱中症のサインである。
熱中症になった場合の対処法についても覚えておきたい。自分自身で「熱中症か?」と感じた場合、あるいは身近な人が熱中症にかかってしまった場合、早急に正しい対処をする必要がある。
まず、涼しい場所へ移動すること。最低限、直射日光は避けなければならず、日陰となっている場所に移動をすること。もし建物がある場合には中に入る。できればエアコンの効いた屋内に退避するようにしたい。
そして体を冷やすこと。衣服のボタンやベルトを緩めて楽な状態、風通しの良い状態を作り、エアコンの効いた涼しい場所で休憩をすること。また、濡れたタオルで体を冷やすと良い。とくに脇、首筋などには太い動脈が通っており、その場所を冷やすと体の冷却効果が高い。水分も補給すること。
大量に汗をかいている場合はもちろん、汗をかいていなくても水分は補給すべきである。熱中症にかかっている場合、汗のかき方にも異常が起こり、まったく汗をかかない状態になることもあるためだ。
また、水分だけではなく塩分も一緒に補給すること。汗と一緒に体内の塩分も流出してしまうので、塩分・ミネラルなどが含まれている市販のスポーツドリンクや経口補水液などを飲むと良い。水やお茶を大量に飲んでも、塩分が含まれていないので痙攣を起こしてしまう事がある。
もちろん、意識の混濁やひきつけなどの重度の症状が出ている場合には、一刻も早く手当てが必要になるので、上記の対処を行いつつも救急車を呼ぶようにしよう。
喉の渇き気づきにくい高齢者。十分な睡眠、適切な温度管理も
最後に、熱中症になりにくい体質にするためのポイントをまとめてみた。
(1)日頃からこまめに水分補給をして脱水状態になりにくい状態にする。
一度に大量の水をがぶ飲みするのは良くない。喉が渇いたと感じる前にも、少しずつ水分補給をすると良い。とくに高齢者の場合には喉の渇きに気づきにくくなっていることが多いので注意が必要だ。
(2)睡眠時間を十分にとること。
疲労の蓄積、睡眠不足は熱中症になりやすいので、早寝早起きの規則正しい生活を送るようにする。
(3)ミネラルを多く含む食事を心がけること。
魚や海藻類などはミネラルが豊富に含まれているのでおすすめである。
(4)室内でも熱中症になるケースがあるのでエアコンを適切に利用すること。
高齢者は暑さの感覚も鈍っていることがあり、また体が冷えすぎて嫌う人もいるかもしれないが、適切な温度設定、除湿機能の利用、エアコンの風が直接体に当らない様にするなど工夫をすればよい。
以上、お伝えしたことを頭に入れていただき、暑い夏を元気に乗り切っていただきたい。(老友新聞社)