乳がんの病期(ステージ)
乳がんの病期(ステージ)は、がんが乳房の中でどこまで広がっているか、リンパ節転移があるか、乳房から離れた臓器への転移があるかなどによって決まります。
ほとんどの乳がんは乳管または小葉の壁から発生し、乳管の中を広がる「乳管内進展」と、乳管の壁を破って乳管の外に広がる「浸潤」で広がります。
表の0期にある「非浸潤がん」は、乳管の中にがん細胞がとどまっている状態のがんのこと。しこりに触れないことが多く、マンモグラフィや超音波で発見される方がほとんどです。また同じく0期のパジェット病は、乳頭のびらんで発見される乳がんで、全乳がんの1 % 未満という非常に稀なものです。
その後「乳管」から「間質」にがん細胞が広がると、Ⅰ期以降の「浸潤」の状態になります。乳がんと診断される場合、およそ80%は「浸潤」がんです。
乳がんの治療
乳がんの治療には、他の臓器に転移がなく、がんそのものの完治を目指す「初期治療」と「遠隔転移の治療」があります。ここでは主に初期治療について説明します。
●初期治療の目指すもの
初期治療では、完全に治ること(治癒)を目指します。以前は乳がんと分かると、命を助けるため、なるべくがんとがん周辺を大きくたくさん切除することが優先されていました。しかし最近では、乳がんは比較的初期のうちからがん細胞の一部が肺や肝臓、骨などの全身に広がることが分かり、現在の標準治療では局所治療(手術や放射線でがんをなくす)と全身治療(化学療法、ホルモン療法、分子標的治療)を組み合わせた方法が行われています。
●手術法について
乳房温存手術
乳がんのある乳房の一部分のみを切除して、できるだけ乳房を残す方法。ステージ0、Ⅰ、Ⅱ期の患者さんを中心に行われます。残った乳房には、微小転移を防ぐため術後放射線療法を行うことが原則です。腫瘍の存在する位置や乳房全体の大きさやバランスにより、乳房がひきつれたり、乳頭の位置がずれてしまうこともあります。
●乳房全切除術
乳頭、乳輪、乳房のふくらみなどすべてを切除する手術。手術後は筋肉(大胸筋、小胸筋)は残りますが、乳房のふくらみはなくなります。
●乳房再建
手術によって失われた乳房を作り直すこと。乳がん手術時に同時に行う「一次再建」と、乳がん手術後に一定の期間をおいてから行う「二次再建」があります。また再建方法には、自家組織(体の一部)を使う場合と、人工乳房(インプラント)を使うことがあります。
2013年7月に人工乳房による乳房再建に関して、保険適用が認められました。しかし現在でもすべての病院でインプラントによる乳房再建が実施できるわけではありません。また費用は手術の内容によって異なり、中には自費診療として行っている病院もあります。手術を行う前に方法や費用、リスクなどについて十分理解しておきましょう。