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健康であるためにはどうしたらいいのか? セルフメディケーションの時代と言われる今、私たちもそれなりの健康常識は身につけておく必要があります。
病気というものをどうとらえるか、医者との付き合い方、 病気にならない考え方――。ほかにも、食事の摂り方、ストレスの対処の仕方、あるいはダイエットを成功させるコツな ど、明るく元気に毎日を過ごしてもらえる有益な情報を連載でお届けします。今の生活をもう一度見直し、自己治癒力を高めるスキルを学びませんか?
心筋梗塞は早朝から昼、脳出血は夕方に発症しやすい
昔から「寝る子は育つ」と言われていますが、これにもそれなりの理由があります。
よく寝る子どもは、「成長ホルモン」の分泌量がピークを迎える午後10時から午前2時ごろにかけても、しっかり眠っているということなのでしょう。
成長ホルモンは骨を作るホルモンで、生後3〜4カ月ごろから夜間の睡眠中に分泌されるようになりますが、成長期に睡眠時間が減少すると、低身長になる可能性もあります。
成長ホルモンの分泌量が時間帯によって決まっているのは、時計遺伝子によって体に生体リズムが刻まれているからです。時計遺伝子による生体リズムは、病気の発症や症状の悪化にも関与します。脳梗塞は夜間〜早朝、心筋梗塞は早朝〜昼、脳出血は夕方に発症しやすいことが、以前からよく知られています。
また、慢性関節リウマチやぜん息は早朝、結核や赤痢など細菌感染による発熱は朝〜昼、インフルエンザやノロなどウイルス性の発熱は夕方、アトピー性皮膚炎や偏頭痛は夜間に症状が悪化しやすいと言われています。
欧米では、抗がん剤を夜間に投与することで治療効果を上げているという報告があります。理由は単純で、骨髄細胞がさかんに分裂する(複製を作る)時間帯(正午前後)に抗がん剤を投与しないため、骨髄細胞が抗がん剤の毒にやられずにすむからです。
このような体内の生理機能に即した治療法を「時間療法」といい、一般に医療の現場では「クロノテラピー」と呼んでいます。
クロノテラピーを試みる病院の1つである横浜市立大学付属病院によると、吐き気や白血球の減少などの副作用が起きなかったそうです。副作用が少ないと、食事が摂れるなどのメリットがあり、免疫力の低下を防ぐことにもつながります。
残念なことに、日本では抗がん剤を投与する速度や量を調節できる「クロノポンプ」も承認されていません。僕自身は患者さんに積極的に抗がん剤を勧めませんが、抗がん剤治療を受けるのなら、夜間に投与するクロノテラピーがよいのは明らかなのです。
岡本 裕先生(おかもと・ゆたか)
1957年大阪生まれ。e-クリニック医師。大阪大学医学部、同大学院卒業。卒業後12年あまり、大学病院、市中病院、大阪大学細胞工学センターにて、主として悪性腫瘍(がん)の臨床、研究にいそしむ。著書に『9割の病気は自分で治せる』『9割の病気は自分で治せる2【病院とのつき合い方編】』『9割の病気は自分で治せる【ストレスとのつき合い方編】』(以上、KADOKAWA)、『22世紀。病院がなくなる日』(飛鳥新社)など多数。
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(岡本 裕/KADOKAWA)
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