「もう、ひとりで頑張らなくていい」生きづらさを手放し、何歳からでも自分を助けるための選択肢

『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』 (和田 一郎/KADOKAWA)第7回【全7回】

仕事、人間関係、あるいは「これからの人生」へのなんとなくとした不安......。あなたが抱えるその「生きづらさ」の根源には、子ども時代の逆境体験、ACEs(エース)が潜んでいるかもしれません。子ども時代に家庭内で感じた寂しさや傷つき、張り詰めた空気などの「過去の体験」が、大人になった現在の心や体、そして日々の選択に、知らず知らずのうちに影を落としていることがあるのです。本書『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』(KADOKAWA)は、近年のデータサイエンスで明らかになった事実をもとに、ACEsがどのように現在の心身、そして人生の選択に影響を与えているかを解き明かします。今回はこの書籍の中から、少し肩の力を抜いて、「これからの人生をラクに生きるためのヒント」をお伝えします。

※本記事は和田 一郎 (著)による書籍『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』から一部抜粋・編集しました。

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ACEs(小児期逆境体験)を知ることは、「回復の責任」を負うことではない

ACEsを知る目的は、当事者に「回復の責任」を背負わせるためではありません。むしろ、私たち社会や支援の側が、「なぜその人が今そのような反応や困難を抱えているのか」を理解し、傷つけずに支える仕組みを整えるためです。

いくつかの海外の公的機関でも「被害経験を前提にした支援」の考え方では、支援の中心は「本人を変えること」ではなく、支援の場や制度の設計を変えることに置かれています。海外では、こうした組織や制度を、「被害経験が広く存在し、回復の道筋があることを理解するとともに、当事者や家族、支援者の中に現れるサインを見落とさず、方針や手続き、日々の関わり方にその知識を組み込み、再び傷つけること(再被害)を積極的に避ける仕組み」だと定義しています。

本書で提供したいのは、「回復そのものの知識」ではなく、「安全と選択を保障し、支援につながりやすくし、支援過程で再び傷つけない」という社会側の責任をはっきりさせるための知識です。

「生きづらさ」を個人の問題にしない福祉的アプローチ

「生きづらさ」を個人の問題にしない福祉的アプローチとは、本人に「気合い」や「自己改善」を求めるのではなく、本人が安全に暮らし、助けを求め、回復へ向かえる条件を社会の側で増やす考え方です。ACEsにまつわる困難は、心身の不調だけでなく、学業や就労、人間関係、住まい、経済状況など生活全体に波及しうるため、「本人の内面を変える」だけでは解決しにくいのが現実です。

そこで福祉は、困難が起きる前から家庭や地域の負荷を下げ、困難が見え始めた段階で早めに支援へつなぎ、支援の過程で本人を二重に傷つけないように制度や関わり方を整えます。

米国疾病予防管理センター(CDC)はACEs予防の枠組みとして、家計の安定、安心できる関係、ストレスへの対処、地域のつながり、必要な支援へのアクセスなどを、個人の努力ではなく「社会が整えるべき条件」として整理しています。この視点に立つと、「生きづらさ」は本人の責任ではなく、長い時間をかけて積み重なった環境の負荷の結果として理解でき、解決もまた「環境を変える」「選択肢を増やす」という方向が現実的になります。

そのうえで強調したいのは、制度の説明よりも「個人が正しい知識を身につけること」自体が、回復への重要な一歩になるという点です。

ACEsの影響を受けた人は、「なぜ自分はこんな反応をしてしまうのか」「なぜ同じところでつまずくのか」を自分の性格や努力不足だと解釈しがちです。またはその前段階で、それに気が付かない状態にいる可能性が高い。

しかし、被害経験を踏まえた支援の考え方では、まず本人が自分の反応を理解し、自分を責めずに対処の選択肢を持てるようにすることが重視されます。

この「理解のための知識提供」は心理教育と呼ばれ、外傷後の反応や回復の道筋、安心を確保する工夫、支援の受け方などを学ぶことを指します。

当然のことですが、知識だけですべてが解決するわけではなく、専門的な支援が必要になることもあります。しかし、知識は「自分の状態を説明できる言葉」につながります。

自分で状況を説明することは重要です。その意味で、知識は回復の出発点になりうると確信しています。

本書は、読者に回復の責任を押しつけるのではなく、読者が自分を理解し、必要な支援につながり、回復へ向かうための現実的な選択肢を増やすために書きました。

ACEsについて知り、どんな選択肢があるのか知っていきましょう!

 
※本記事は和田 一郎 (著)による書籍『大人になっても消えない重荷を抱える人のための 生きづらさの手放し方』から一部抜粋・編集しました。
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