長く続いたデフレのトンネルから脱しようとする日本。しかし、世の中的に景気がよくても、それを実感できていない人は多いのではないでしょうか? 老後破産や格差社会の不安が広がる昨今、自分を守るために必要なのが「お金の教養」です。
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株価は好材料と悪材料を「織り込む」
2.65 %、2.75 %の壁を超えて、2.88 %にまで達した長期金利。これもまた、先ほど登場した「新高値」です。新高値をつけるのは、さらに上がるシグナル。ということは、アメリカの長期金利は今後、ことによると3%をつける可能性もあります。
「そんなことになったら、また暴落するのでは ? 」という懸念はありますが、今回の暴落でかなり「織り込んだ」可能性が高いので、それほど下がらないかもしれません。株は、さまざまなリスクがあってもそれを一度織り込めば落ち着きます。織り込むことで不安材料はもう不安材料ではなくなり、さらなる下落は起こりません。
不思議な特徴ですが、これも株の世界では当たり前の現象です。不安材料が出尽くさない間は、株価は下がり続けます。しかし出尽くせば、底を打って上がります。
好材料も同じです。良い材料が出尽くせば流れは反転し、どんなに活況でも株価は下がります。このように、いいことも悪いことも「材料が出尽くしたか否か」を見極めるのも、投資家に不可欠な眼力と言えるでしょう。
保護貿易主義が世界的に台頭してくれば、日米の株価の行方はますます不透明になり、不安定化しますので注意が必要です。こうした「目前の株価の動きを左右するもの」を「材料」といいます。株価が上がる材料は「買い材料」、下がる情報は「売り材料」です。この「材料」と株価の「循環、波動(サイクル)」の両方をにらみながら、先行きを予測するのです。
これに基づいて、アメリカの株価を予測してみると......。ダウ平均の直近の高値は2万7000ドル手前。この先、長期金利が3%をつけても、今回のことを織り込んでいれば、株価はまだ上がるでしょう。ただ短期的には、トランプ大統領の中国への高関税による米中貿易戦争の様相が拡大すれば、NYダウ平均の本格的な調整、下落局面を迎えるでしょう。しかし、中・長期的には、トランプ大統領が進めている減税や公共投資で好景気が進めば、米国株価は再び上昇し、2万7000ドル超えも見えてきます。
ここで大事なのは、インフレ率が過剰にならないよう、「適温」を上手にキープできるかどうかです。FRBのパウエル新議長は2月 27 日、就任後初の議会証言で、利上げに積極的な姿勢を示しました。しかしアメリカ経済がデフレ脱却を果たした今、そろそろ金融緩和の出口戦略を練っていることも確かです。
これが「適切に」行われるかどうかは、非常に重要な分かれ目です。金融引き締めは、一つ間違うと大変なことになるのです。その好例を、私たちは身をもって経験していますね。そう、バブル崩壊です。「失われた 20 年」を引き起こしたあの出来事はなぜ起こったのか、ここで改めて振り返ってみましょう。
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スガシタパートナーズ株式会社代表取締役。国際金融コンサルタント。投資家。学校法人立命館 顧問。メリルリンチをはじめとする名門金融機関で活躍後、現職。
変化の激しい時代に次々予想を的中させることから「経済の千里眼」の異名をもち、政財界にも多くの信奉者をもつ。『今こそ「お金の教養」を身につけなさい』(PHPビジネス新書)、『マネーバブルで勝負する「10倍株」の見つけ方〔2018年上半期版〕』(実務教育出版)など著書多数。
(菅下清廣/KADOKAWA)
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