「ひきこもり」とは、学校や職場にうまく適応できず、自宅や自分の部屋から出ない人のことをいいます。家族以外の人とは、ほとんど交流を持ちません。以前は学校でのいじめなどがきっかけで、若者がひきこもるケースが多かったのですが、最近は「ひきこもり」が長期化し、ひきこもる人の高齢化が問題になっています。40~50歳代のひきこもりの子どもについて、「働けない子どものお金を考える会」代表の畠中雅子さんに聞きました。
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障害者手帳を取得し月収3万円を稼ぐ。
遺産と合わせて月10万円の生活を維持
Aさんの場合 Aさん39歳(無職)
父70歳(年金受給)、母67歳(年金受給)
一人息子のAさんは、有名企業に就職しましたが半年で辞め、自室にひきこもるように。
親の資産は総額2400万円で、両親の年金は年額310万円。いまは年額40万円の黒字ですが、入院や介護などで支出が増える可能性もあり、30年後、Aさんが69歳のときに資産が底をつくことに。親亡き後も息子が資産を崩しながら暮らせるかどうか相談に来ました。
親の資産だけでなく子どもの就労の道も探る
亡き後の子どもは、遺産で生活する場合が多いようです。しかし上記のグラフで見ると、Aさんはこのままだと69歳で遺産がゼロに。遺産以外の収入を得なければなりません。
「いきなり『月10万円稼ぎなさい』というのは無理です。障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を取得し、障害者を受け入れる職場で毎月3万円ほど収入を得る方法もあります。20年間働いて給料をためれば、資産がなくなるのを10年延ばせます」。
障害状態によっては、「障害年金」の申請を考えます。受給できれば毎月約6万円の収入に。お金の管理が心配なときは「社会福祉協議会」「後見制度支援信託」などを利用する方法もあります。親は有価証券や保険の資産と、住宅ローンの負債などを分かりやすくまとめておきます。
上記表のように、1カ月の生活費の計画を立てることも大切だといえます。
【Aさんのサバイバルライフプラン活用のポイント】
- 障害者手帳を取得して月3万円ほど稼ぐよう働きかける。
- 障害状態によっては「障害年金」を申請。
- 親は資産一覧をノートにまとめておく。
- 親亡き後、お金を管理する人を決めておく。
- Aさんは生活費を1カ月10万円と決めて生活するよう心がける。
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取材・文/松澤ゆかり イラスト/オオノマサフミ
畠中雅子(はたなか・まさこ)さん
ファイナンシャルプランナー。著書は『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン』(近代セール社)などがある。