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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。
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前の記事「介護保険サービスの料金の実態「ヘルパー」「デイサービス」「ショートステイ」/介護破産(31)」はこちら。
介護施設の利用料金
これまでの章でも述べたように、介護保険サービスを利用する際には、原則1割の自己負担を要する。たとえば、1万円の介護保険サービスを利用すれば、1000円の自己負担といった具合だ。
しかし、施設などを利用した際の食費、部屋代、光熱費等は全額自己負担となる。
そのため、次に紹介する特別養護老人ホームなどの施設に入所した際には、介護保険自己負担分1割のほかに、食費等が課せられるというわけだ。
この自己負担分1割に関しては、高額介護サービス費制度が設けられており、1か月あたりの自己負担額が3万7200円を超えると、それ以上の負担額は戻ってくる仕組みとなっている。つまり、介護保険サービスの負担額は1か月ごとに上限額が決められていることになる。
なお、単身で年収383万円以上の所得がある者に関しては、自己負担額の上限が4万4400円となっている。
特別養護老人ホーム
在宅介護を望んでいても、認知症により徘徊が問題となり、自宅での介護が難しい場合、または、独身の子どもと要介護者の親の二人暮らしで、子どもが退職を考えなければならないほど介護に負担を感じている場合は、施設入所を考えるというケースもしばしばみられる。また、独居生活を送る要介護者が、一人で暮らすよりも、施設に入所したほうが安心であることから、自ら介護施設への入所を希望する例も少なくない。
身近な介護施設といえば、公的施設である特別養護老人ホームであろう。原則、要介護3以上から入所可能だ。施設の値段は、日割り計算となっており、要介護度が重くなると費用も高くなる仕組みだ。ただし、食費、部屋代などは自己負担となり、光熱費も徴収される場合がある。また、個室か相部屋かで自己負担額が異なる。
具体的には、個室で毎月諸経費や介護保険自己負担分を含めて9~15万円程度となっている。
また、相部屋では5~8万円程度が相場である。特別養護老人ホームでは、要介護度や所得に応じて利用額が異なる。特に、所得が低いと「補足給付」といった助成制度が活用できるため、個人によって負担額が異なる。しかし、個人での預貯金が1000万円以上、夫婦で2000万円以上を有していれば「補足給付」は利用できないため、負担額は高くなる。
次の記事「相部屋の空きがなく個室になると毎月15万円以上が必要「老人保健施設」/介護破産(33)」はこちら。
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。
村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)
長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。