国民年金受給者は預貯金を0にして生活保護受給者になったほうがよい!?/介護破産(29)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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内閣府『平成26年版高齢社会白書(全体版)』では、年齢65歳以上の二人以上世帯の平均貯蓄額は約2209万円。全世代における二人以上世帯の平均貯蓄額が1658万円であることに比べて、約1.3倍となっている。当然、勤労期間が長い高齢者世帯のほうが貯蓄額は高くなる。

しかし、高齢者間でみると、65歳以上の二人以上世帯において、3000万円以上の貯蓄を有する世帯が16.5%を占めるのに対し、同じく65歳以上の二人以上世帯で貯蓄額が300万円未満しかない世帯が13.1%を占めている。

明らかに65歳以上世帯内において格差が生じている。既述のように、これらは収入面などの年金額においても同様である。

いわば中途半端に預貯金を有している国民年金受給者は、預貯金を使い果たして生活保護受給者となったほうが、安定した介護生活が送れるということを意味している。現在の生活保護法の規定では、たとえ持ち家であっても、ケースによって資産価値が低いと判断されれば生活保護受給も可能である。介護保険サービスの拡充が急がれるものの、同時に生活保護制度以外の、低所得高齢者対策も充実されなければならない。

高齢者層といったひとくくりの層にするのではなく、高齢者内(世代内)における経済格差を認識しながら、「在宅介護」といった施策を進めていかなければならないのだ。

当然、介護保険サービスは存在するとしても、保険外サービスを利用するか否かで、「在宅介護」の環境にも違いが生じる。やはり、経済的ゆとりのある高齢者世帯のほうが、良質な保険外サービスを受けるといった選択肢も多く、在宅介護の問題は少なくなる。

  

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。本書では現在介護生活を送っている人々の生の声をルポしつつ、介護をするにあたり知っておきたいお金のこと、法律面のことなどに言及。介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法論を記した一冊です。

 

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