国民年金のみで生活する老夫婦は生活保護水準以下の介護生活/介護破産(28)

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介護のために資産を失う「介護破産」が最近話題となっています。実は介護破産の原因には、単に資産の多寡だけでなく、介護に関する「情報量」も大きく関わってくるのです。
本書「介護破産」で、介護で将来破綻するような悲劇を防ぐための方法を学んでいきましょう。

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国民年金受給者を待ち受ける罠

ただし、厚生年金受給者であっても安心はできない。多くの場合、夫は必ずしも一人暮らしではないからだ。老夫婦の二人暮らしで、妻が現役世代の頃に専業主婦だった場合、二人合わせての年金額は20万円弱となる。

先の試算はあくまでも一人の人間が一人分の厚生年金を受給し、一人で介護を受けることを前提としたものである。世帯人数が2倍になっても、収入は1.3倍分しかないのだから、どちらかが介護が必要となると、厳しい介護生活が予想される。

しかも、夫に先立たれた妻の年金受給額は、遺族年金を合わせても計8~11万円程度になってしまう。そのため、専業主婦であった女性は、先に夫が亡くなることも想定し、老後の資産設計を行なうべきだろう。特に、夫が介護状態を経て看取ったあと、その医療費や介護費捻出のために、すでに預貯金が底をついていた、ということも稀ではない。

老夫婦のみの世帯が急増している現在、介護に携わる多くが配偶者であることは誰もが承知している。65歳以上の高齢者の有配偶者率は2010年の時点で男性80.6%に対し、女性は48.4%だ。女性のほうが長生きする率が高いことから、妻が夫を介護するケースが多くなり、残された妻が「貧困」状態となることも珍しくない。

実は国民年金のみで生活する老夫婦は、生活保護水準以下の介護生活を送ることも少なくない。国民年金のみの年金受給額は毎月一人あたり平均5万円前後であり、夫婦合わせて10~12万円前後となる。しかも、国民年金受給者のうち、規定通り65歳から受け取っている人は2012年度末で全体の6割弱。残りの約4割の人は60歳から年金がもらえる「繰り上げ支給」を選択している。繰り上げ支給を選ぶと、生涯にわたって受給できる金額が固定化されてしまい、結果的には月ごとの支給額が減ることになるのだが、家計の厳しさにより、損と知りつつも早くからの受給を余儀なくされている実態が垣間みられる。

いっぽう、生活保護受給者の支給水準は、地域差はあるものの、独居高齢者で月々11~12万円である。しかも、生活保護受給者は限度内であれば介護保険サービスの自己負担額はまったく課せられない。もちろん、年金受給者は利用のたびに自己負担分が生じる。毎月の介護保険料も同様である。

 

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結城 康博(ゆうき・やすひろ)
淑徳大学総合福祉学部教授。1969年生まれ。社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャー。地域包括支援センターおよび民間居宅介護支援事業所への勤務経験がある。おもな著書に『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から 』(岩波新書)、『孤独死のリアル』(講談社現代新書)、『介護入門 親の老後にいくらかかるか? 』(ちくま新書)など。

村田くみ(むらた・くみ)
ジャーナリスト。1969年生まれ。会社員を経て1995年毎日新聞社入社。「サンデー毎日」編集部所属。2011年よりフリーに。2016年1月一般社団法人介護離職防止対策促進機構(KABS)のアドバイザーに就任。おもな著書に『書き込み式! 親の入院・介護・亡くなった時に備えておく情報ノート』(翔泳社)、『おひとりさま介護』(河出書房新社)など。

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『介護破産』
(結城 康博、村田 くみ/ KADOKAWA)

長寿は「悪夢」なのか!? 介護によって始まる老後貧困の衝撃!
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