「老後破産」――最近よく耳にする恐ろしい言葉ですね。自己破産者に占める70歳以上の割合は、2005年の3.05パーセントから、2014年には8.63パーセントに増加したというデータがあります (日弁連「2014年破産事件及び個人再生事件記録調査」)。まじめに働いてきた人でも、定年後の思わぬ出費や医療費の増加などで資金不足となるケースも多いといいますから、もはや他人事ではありません。老後破産を回避するにはどうすべきか、書籍『定年男子 定年女子 45歳から始める「金持ち老後」入門!』から、解決法を学んでいきましょう。
月8万円の収入で「老後の赤字」は消える!
著者の一人、元金融マンで経済コラムニストの大江英樹氏は「定年後も働くことこそ、老後不安の最強の解決法」といいます。年金だけで生活するのが難しい状況ならば、就労による収入で補えばいいというわけです。
そして、もう一人の著者、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝氏によれば、定年夫婦の家計赤字は平均で年100万円程度。つまり、夫が定年退職後、世帯で年100万円、月にして8万円強ほど稼げれば、家計の赤字はほぼなくなる計算です。現在40~50代の方にとって定年後の再就職は想像がつきにくいかもしれませんが、「月に8万円でOK」と考えると、ハードルがぐっと下がりますよね。
さらに大江氏は「生涯現役で働き続けると、私たちの人生は明るくなる」と主張します。なぜなら、働くことで老後の三大不安とされる「貧困・病気・孤独」を解消できるから。何もすることがなく家に引きこもっていると、心身ともに調子が悪くなったり孤独を感じたりしがち。それよりも仕事をして、適度に規則正しく、周囲と関わる生活をした方がずっといきいきといられそうですね。
定年後の働き方のパターンは再雇用、転職、起業の3つがありますが、40~50代のうちから、自分にはどれが向いているのかを考え、人脈づくりや資格取得など、次のステージに向けた行動をしておくことが大切なようです。
病気と介護にかかるお金、実際はいくら?
生命保険文化センターの平成27年度の調査(「生命保険に関する全国実態調査」)では、介護期間は平均4年11カ月、介護に要した費用は、住宅改修や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計が平均80万円、月々の費用が平均7.9万円となりました。
井戸氏によると、最後まで自宅で過ごす場合、満足のいくサービスを受けながら余生を全うするのに必要な費用は、医療費と介護費合計で800万円ほど。また、民間の有料老人ホームに入所する場合は、介護保険を使っても自己負担分は総額1500万~3000万円ほどになるそうです。
「女性は人生で三度の介護を経験する可能性がある」と井戸氏。一度目は親、既婚者の場合、二度目は夫、三度目は妻である自分自身です。親や夫の介護に費用を使いすぎてしまうと、妻の介護が必要になった時に費用が足りず、老後破産を招いてしまうケースもあるとか。親の介護は親のお金でまかなう、兄弟間で分担を決めておく、貯蓄や退職金をあてるなど、具体的な計画を立てておく必要があるといいます。
老後のお金についての不安はなかなか拭い去れないものですが、実態をきちんと把握することで、打てる策も多くあるようです。今からできる準備をしっかり行って、豊かな定年後を迎えたいものですね。
文/寺田きなこ
(大江英樹・井戸美枝/日経BP社)
お金のプロでありリアル定年男子&定年女子の二人が、自らの経験と知識を総動員してガイドする「老後のお金入門」。経済的にも精神的にも豊かな定年後を迎えるために、現役時代から準備すべきことを紹介しています。