「逃げた嫁をいますぐ出せ!」DV夫から逃げてきた女性を必死で保護。その結末が...

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:61
プロフィール:地方都市で公務員をしている61歳の男性です。

「逃げた嫁をいますぐ出せ!」DV夫から逃げてきた女性を必死で保護。その結末が... 15.jpg

私は地方都市の町役場で再任用の職員として勤めているのですが、同じ役場に勤めるAさん(50代)は、奥様のB子さんと20歳近く離れている「年の差夫婦」です。

奥様はまだ30代前半で、職場でも有名なおしどり夫婦です。

さて、2人の馴れ初めはいまから10年ほど前のことです。

当時Aさんは、町の社会福祉協議会の職員として出向しており、いわゆる「駆け込み寺」を担当していました。

「駆け込み寺」とは、DV(家庭内暴力)などでパートナーから逃れてきた女性(稀に男性も)を保護し、職や住居を世話するという役回りです。

そんな「駆け込み寺」に当時20歳前半のB子さんがやってきました。

夫の日常的な暴力に耐えかねて、知り合いを頼ってたどり着いたという話でした。

Aさんはとても熱心な職員として知られていましたが、B子さんに対しても親身に相談にのり、アパートの紹介からパートの職探しまで、あれこれと尽力したということです。

ところが、ここで想定外の事態が起きます。

Aさんは当時40代で独身でした。

他に相談や保護をしている女性と同じように接していたつもりだったのでしょうが、何事にも一生懸命に向き合うB子さんの凛とした人となりに、すっかり惚れ込んでしまったのです。

また、B子さんも熱心に対応してくれるAさんに深い信頼を寄せていたようで、彼の真摯な対応に惹かれてしまったようでした。

お互いの心情に触れるうち、恋愛感情にまで発展し、付き合い始めてしまったのです。

しかし、B子さんは意志はあるものの、まだ離婚していませんでした。

ましてや仕事上、関係がプライベートなことに発展してしまうのは問題視されてしまうので、周囲には付き合っていることを隠していました。

その後、しばらくしてB子さんの夫のCさん(20代)が、B子さんが相談に来ていたことを突き止め、社会福祉協議会に怒鳴り込んできたのです。

このときのことは私たちの間で伝説となっています。

Cさんはガタイのいい強面の男で、いるだけでまわりの人は怖がるような感じだったそうです。

「B子が来たことはわかってるんだ! さっさと連れてこい!」

「確かにその女性は我々が保護しています。話し合うのであれば仲介はします」

「話し合い? そんな必要はない! 力ずくでも連れていく!」

「それはさせられません。彼女はあなたに怯えてここに来たのですから」

こんなやり取りが繰り広げられ、Cさんは職員であるAさんに掴みかかったそうです。

私が耳にした噂ですが、Aさんは胸倉を掴まれたり、頬を張られたりしたという話もあるくらいで、とにかく壮絶な対決だったそうです。

しかし、Aさんは職務上の責任感から毅然とした対応を崩さなかったのでした。

Aさんの対応もあり、Cさんは弁護士を通じた話し合いに合意、かなりの期間と紆余曲折があったと聞いていますが、協議離婚が成立しました。

こうして晴れて自由の身となったB子さんは、Aさんとの数年の付き合いを経て、ひっそりと入籍し、ゴールインするに至ったというわけです。

この話は、いまだから語れる逸話として残っています。

「いや、そんなドラマチックな話じゃないです。もうドキドキもんでした」

Aさんは話が出るたびに、そう照れ笑いしながら話を遮るのです。

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