アメブロで「～こんな事を言っちゃあなんですが！～」を運営しているかづと申します。
3カ月間の短期契約で子ども服店のアルバイトをしていた時のお話です。
※登場人物はすべて仮名です
【前回】開店から閉店までワンオペの無茶な仕事。「売れる工夫」をしてみたら店長に怒鳴りつけられ
ふとした私の思いつきで、店先のワゴンの商品をサイズ分けして山積み状態にしてみたらそれが当たり、若いママさんたちが宝探しのように商品を手に取って買ってくれた。
もちろん店長の考えている売り方とは違うので、店長がいない時にその売り方をし、退勤前にはワゴン内全てを畳んでから帰っていた。
それをたまたま店に忘れ物を取りに来た店長に見つかり、私は怒鳴りつけられたのだ。
「これ何してんの！！！」
店長は顔真っ赤で私を怒鳴り、チマチマとワゴン内の商品を畳みだした。
「畳みなさいよ！！」
店長はものすごいスピードで畳んでいる。
「あの...、こうやった方が売れるんですよ...。ちゃんと畳んで売るより3～4倍も...」
店長は一瞬ぎょっとした顔つきになったが、すぐさまきつい表情になった。
「畳んで！ここはこういうやり方やの！！」
店長が帰った後、ワゴン内にはきちんと畳まれたＴシャツがぎゅうぎゅうに収まっていた。
あくまでも個人的だが、こんなにきっちりと畳まれて収まっているワゴンから物色するのは、売り場を荒らす事になるので私なら手を出さない。
それも1枚引っ張り出すと周りも同時に引っ張り出され、畳まれていたＴシャツ達はクシャッとなる。
それをすかさず横から手を出して、チマチマと畳んでは収め、畳んでは収めをするのが店長流なのだ。
「こんな事しとるから客が来んのや」
夕方、まだ閉店するには少し早い時間に、私を面接してくれたオーナー（男性）から電話があった。
「どないや？ 売れてますかー？」
オーナーはとても話しやすく気さくな恰幅の良いおじさんタイプだったので、これこれしかじかとワゴン商品をワゴンセールの様に山積みにした方が3～4倍売れたことを話した。
「そりゃええこっちゃ！ 売れたらそれでええ！ 売れ残ったら新しい店に持って行くけど、出来るなら全部売りつくしてほしいんや！」
オーナーは売れるのであればどんな方法でも良いと言ってくれた。
翌日、私はまた朝から一人勤務だったので、いつもの様にワゴン内を山積みにするつもりだった。
ところがなぜか開店時間になって店長が来た。
シフト表には店長の出勤は書かれていない。
挨拶をするが無視をされ、かと言って店長は仕事をするでもなくバックヤードから出て来ない。
私は意を決して店長に前日オーナーとの電話の内容を話した。
「オーナーは売れたらいいんで、方法はどうでもいいとおっしゃってました。いちいち畳まなくても、その方が買ってもらえるならそれでいいとおっしゃってました。出来る限り売り切ってくれって」
そう私が言い終わると、店長はこちらを向く事も無く
「畳んで！！」
と声を張り上げた。
あぁ、そーですかー！！ オーナーがそれでいいと言っているにもかかわらず、同じ雇われの身でありながらなんでこんなに強気なのか？？ 自分の店でもない癖に！何様よ！ 腹が立ったものの仕事に支障が出てはいけないと思い直した。
通常通りに店を開けたが、裏に見張りがいるようで気分が重い。
仕事の合間に包装紙で作った紙袋も、相変わらず私のいない日でなおかつ店長の出勤日にごっそりと新店舗に持って行かれている。
ひと月近く働いた中で分かったことは、オーナーがかなりのやり手な様で他にも系列店が数店舗あり、新しく出来たショッピングセンターに店を出すので売り上げの悪い店舗を閉める事にしたのがこの店という事だった。
売り上げが悪くて閉店になる店長なのに、なんでこの人はこんなに好き勝手？
昼過ぎになったが、相変わらず何をするでなくバックヤードで雑誌を読んだり、携帯を見ていたりする店長。（まだスマホが無い時代です）
狭いバックヤードに店長が陣取っているので、お昼ご飯のおにぎりを食べに入ることもできない。
いつまでいるんだろう...？
そう思っていた時に、オーナーが店に現れた。
「どや？ 売れてるか？」
オーナーに色々話したくても、すぐ後ろには店長がいるので話せない。
と、その瞬間、バックヤードから店長が出て来て、なんとオーナーの腕に絡みついた。
！！！！
「ほな、頑張ってや！」
オーナーは満面の笑顔で、私に手を振って出て行った。
「お昼何食べる～？」
オーナーの片手に腕を絡ませた店長が、こちらを向いてにやりと笑いながら言った。
なるほど～、そういうことですかぁ。
だから態度がでかいんだぁ...。
ここで待ち合わせだったのねぇ。
ちなみに店長はオーナーの奥様ではない。
そしてやはりその日はワゴンの商品は売れず、手に取って貰う事すらなかった。
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