＜この体験記を書いた人＞
ペンネーム：ちーさん
性別：女性
年齢：64
プロフィール：会社員の夫と2人暮らし。私も会社員として働いています。
約36年前、結婚して4年ほど経った頃、私（当時28歳）は子どもを保育園に通わせることにしました。
空いた時間には、とてもモダンなカフェでアルバイトをすることに。
オーナーは私より14歳ほど年上で、バリバリのやり手社長。
当時、カフェの他にレストランや飲食店など数店舗を経営していました。
現在で例えるなら、熱海のような急に人気がでてきた観光地に出店し、これが大ヒット。
社長は「俺は一代でここまでやってきた。凄いだろ？」と、私に何度も言っていました。
私は事務員のアルバイトで入ったのに「今日から秘書ね」という社長の一言で、秘書としての仕事をすることになりました。
ある日、社長に「おい、桜を見にいくぞ！」と言われました。
「え⁉ そんなことまでつき合わなければいけないの？」と心の中で思ったのですが、社長からの強引な誘いを断ることもできず、社長の愛車の高級輸入車に乗りました。
みんなが仕事中なのに、近くの山の桜が満開の場所に私は連れて行かれて...。
「こんな場所を知っている人はいないよ。桜も眺めもいいだろ？」と、社長は自慢気に言うと、私に近づいてきたので「まずい！」とさりげなく逃げました。
嫌な予感はありました。
幸い、それ以上強引に迫ってくることはなかったのですが、仕事では2人で出かけなければならないこともあり、危うい関係を進展させないように必死だった私。
いまの時代でも、社長が勝手に「秘書」を作り、連れ回すなんて考えられないですよね？
会社のために必死で働いている従業員の手前、許されることではないと思います。
その社長は、私にはそれ以上接近してくることはなかったのですが、社外の女性と不倫していました。
教員をしている立派な奥さんもいるのに...。
不倫相手の女性は私より一回り上で、とても綺麗な方でした。
カフェにも営業でしょっちゅう来ていて、社長の奥さんがいても堂々としていました。
カフェで古くから働いている女性に「社長とつき合っている人よ」と教えてもらったのですが、華やかで綺麗な女性だから納得です。
しっかりした教員の奥さんと不倫相手の綺麗な女性、まったく男って！
働いている女性たちはそう思っていました。
観光客で賑わった地域で商売が繁栄し、順風満帆の社長は美しい愛人と賢い奥さん、ときどきちょっかいを出す秘書まで作り、鼻高々だったのでしょう。
私は子どもが小学校に上がったのをきっかけにカフェのアルバイトを辞めて、正社員として他で働くことにしました。
時は流れ、華やかだった観光地は観光客が激減。
カフェも人の手に渡ってしまったようです。
最近、その社長と教員だった奥さんがコンビニで一緒にいるのを見かけました。
すっかりおじいちゃんになってしまった社長と、昔の面影もなく子どものようにはしゃぐ奥さん。
私はそっとコンビニから出て「人生とは？」と考えてしまいました。
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