<この体験記を書いた人>
ペンネーム:とらとら
性別:女性
年齢:54
プロフィール:アラフィフ兼業主婦。車の運転が好きですが、出張先でタクシーに乗るのも好きです。
54歳の兼業主婦です。
これは30年ほど前、私がまだ就職活動していた頃の話です。
とても素敵なタクシーに出会いました。
当時、私は第一志望の会社の採用試験に臨んでおり、順調に面接は進み、その日は最終面接の予定でした。
私は朝から余裕をもって準備をし、いつも以上に忘れ物などがないか確認してから家を出ました。
しかし、早めに家を出たにも関わらず、なんと乗るはずだった電車が事故で遅延してしまったのです。
しかも、人身事故だったようで「いつ再開できるかわからない」と駅構内にアナウンスが流れました。
「せっかく早めに家を出たのに、このままでは間に合わない!」
そう思った私は、慌てて駅を出てタクシーに乗り込みました。
ただ、大学生だった私の財布には3,000円程度しか入っておらず、タクシーにも乗り慣れてないので、その金額でどこまでいけるか分かりませんでした。
しかし、とにかく面接時間に間に合うように会社へ行かなければと思った私は、タクシーの運転手さんに正直に伝えました。
「面接で××会社まで行きたいんですが、3,000円しかないんです。この金額で行けるところまで行ってもらっていいですか?」
タクシーの運転手さんは一瞬怪訝そうな顔つきになりましたが、私の真剣な顔に何か感じ取ってくれたようです。
「よっしゃ分かった。お姉ちゃん、その面接何時からなん?」
私が時間を伝えると、運転手さんは走り出してくれました。
「間に合うから安心しぃ。面接は緊張や焦ってしもて、言いたいこと言えんのが一番あかんからね」
運転手さんは間に合うか不安で泣きそうな私に、優しく声をかけてくれていました。
そして、宣言通り、余裕をもって会社のあるビルの近くまで連れていってくれました。
「正面にはさすがにつけれないから。ここで降りて行き、面接頑張ってな」
金額は1,500円程度でした。
当時の私は足りたんだとほっとしながら支払いましたが、今思えば、おそらく3,500円くらいはかかる距離だったと思うのです。
タクシーの運転手さんは途中でメーターを止めて走ってくれたのでしょう。
きっと3,000円しかないと私が言ったので、帰りのバス代や電車代のことも気にしてくれたのだと思います。
最終面接の選考の結果は見事採用。
運転手さんに言われた通り、自分の思っていることを素直に伝えられたのが採用に繋がったのだと今でも思います。
そして、現在も私はそのときの会社に勤めています。
毎年、真新しいリクルートスーツを着た学生が就活に走り回っているのを目にするたびに、あのタクシーの運転手さんのことを思い出して感謝しています。
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