<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:61
プロフィール:町役場で定年まで勤め上げて61歳になってしまった男性です。サンタクロースを信じる心はいつ失ったものやら。
ちょっと時期外れですが、クリスマスにまつわる話です。
子どもたちがまだ小さかった頃、遠慮無用の「サンタさんへの手紙」を受け取り、サンタの来訪を演出するために自室の窓から裸足で庭へ出て、玄関に荷物を配達したものでした。
しかし、我が子がサンタを信じない年齢になってからは、単なる年末のイベントの1つになってしまいました。
そんな寂しい大人でも、クリスマスの夢物語をちょっと思い出す出来事がありました。
4~5年前、まだコロナ禍になる前の話です。
私は妻(現在58歳)のクリスマスバーゲン巡りのお付き合いで、大きな街のショッピングモールを訪れていました。
「どれぐらいかかる? え、たったの3時間でいいのか? じゃあ一歩きしてくるよ」
妻はひとりで買い物をするので、私はいつもその辺りを散歩するのが常です。
クリスマス気分のショッピングモール内はなかなか楽しい雰囲気で、ウィンドウショッピングと洒落込んでいました。
しばらく歩いていると、トイレに行きたくなりました。
トイレを見つけて、通路の陰にある入口を目指すと、1人の少年が立っていました。
小学校高学年ぐらいでしょうか、男性用トイレの入口の壁際に身を寄せて、ときおり中を覗き込むようにしています。
「なんだろう、混み合ってて順番待ちしてるのかな?」
そう思って少年の背後から覗き込むようにしてみましたが、中はガラガラで清掃中でもなさそうです。
「大丈夫だよ。ここにいるから」
少年は中に向かって声をかけると、背後の私に気がついたようでした。
「あ、すみません...」
バツが悪そうに、道を譲るように壁際に身を寄せてくれました。
一体何だろう? 少し怪しく思いながら中に入ると、誰もいないと思った室内に1人だけ先客がいました。
幼稚園ぐらいの男の子でしょうか、ズボンとパンツも下ろして、お尻丸出しで小便器に向かっているのです。
ちょっと気を遣って、少し離れたスペースで用を足そうとした私。
「兄ちゃん、いる?」
その男の子は心細そうな声で、外に向かって声を張り上げました。
「いるよ! どう?」
外からさっきの少年の声が聞こえてきました。
「うん、だいじょうぶ!」
男の子はそう言うと、もぞもぞとズボンを上げて出口へ向かって行きました。
私も用を足し終え、手洗いをしようと洗面台に向かいました。
気になって、外の子どもたちの話に耳をそば立てました。
「ね、僕、1人でできたよね!」
「うん、確かに手伝いはいらなかったね」
「ね、兄ちゃん、サンタさんへの手紙にちゃんと書いてよね」
「任せとけ。弟はもう1人でトイレができます、ってちゃんと書いてやるから!」
それ以上は聞き取れませんでしたが、どうやらサンタさんへのプレゼントのおねだりの条件に『1人でトイレができること』というのがあったのでしょう。
頑張り屋の弟と優しいお兄ちゃんのちょっとした、『クリスマスプレゼントへの挑戦』だったわけです。
2人はあの後、きっとお目当てのプレゼントをゲットしたんだろうなあ...。
物語の続きを想像しながら、ほっこりした気分の素敵なクリスマスが過ごせました。
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