<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:結婚30年間近の夫婦です。「あ、うん」の呼吸を目指しながらも、現状「あ、ん?」という感じです。
2023年で結婚30周年を迎えます。
大学進学を機に実家を出た私にとって、これほど長く一緒に暮らした相手は妻(58歳)だけですから、何となく通じるところは増えていると感じています。
長い年月を抱えて美しく育つ真珠にちなんで、結婚30周年は「真珠婚」と言われるそうですが、夫婦関係はそれほど美しく実ってはいない気もします。
よく熟年の夫婦になると「あれ」「それ」だけで会話が成立するみたいな話を聞きます。
まあ、生活がルーティン化している証拠なのでしょうが、気心の知れた関係性は羨ましくもあります。
最近、意識してかどうかは分かりませんが、妻がそういった関係を私に求めてきている感じがしてなりません。
2022年の10月の休日のことです。
「あ、回覧...」
机の上に置かれた回覧板を一瞥して、それだけ言い残して妻が出かけていきました。
「回覧? ...回覧板を回しといてってことか?」
私はそのように受け取り、回覧板を手に次の順番である隣家へ、とはいっても田舎なので、ちょっとした散歩程度の距離にあるのですが、そこまで届けました。
しばらくして妻が帰宅すると、きょろきょろと何かを探している様子です。
「ただいまー、留守番どうもね...と、あれ? ねえ、回覧は?」
「ああ、出掛けに気にしてたみたいだったから、回したよ」
気が利くわね、とお褒めのお言葉でもいただけるかと返答すると、妻がキッと私を睨みました。
「え、まだ回さないでって言ったのよ! 見たいチラシが入ってたのに」
こうまくし立てた妻は、回覧板を取り戻しに隣家へ向かいました。
こんなケースが徐々に増えているように思います。
妻は全部伝えたように言ってきますが、実際に口にしているのは単語だけです。
こうした発言の意味を取り違えると不機嫌になるので、私としては地雷をばらまかれているような気分です。
ほかには、夕食のおかずに刺し身が並んでいたときです。
「醤油」
と妻が言うので、ああ、醤油ね、と思って醤油をかける私。
「ああ! もうかけたって言ったでしょ?」
言ってないよ、と思いながらもやむなく頭を下げます。
「わさび」
ああ「今のはもう出してあるよ」って意味だよな、この流れだと、と思って食べ始めると...。
「ん? なんでわさびが出てないの? さっき出してって言ったでしょ?」
今度は「持ってきて」の意味だったことが判明する、といった具合です。
こんな微妙なケースも。
「洗濯」
これは「洗濯するから何かあったら出して」と言いたいときと「洗濯したから干すの手伝って」という意味のときがあるようです。
彼女は語尾を上げて疑問形っぽく言ってみたり、語気を強くして手伝いを促すように言ってみたり、多少の変化はつけているつもりのようですが、受け手にとっては難しすぎます。
そして、意味が通じないとたちまち不機嫌になります。
「分かんないよ、単語でしゃべんないで、ちゃんと最後まで言って」
「もう30年近く一緒にいるのに...」
そんなことがあるたびにお願いするのですが、これまた不満げな表情になります。
夫婦の「阿吽の呼吸」は今のところはるか遠い目標になっているようです。
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