<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:地方都市で役場に勤めている60歳の男性です。わが町には高齢者との良い関係を続けている小学校があります。
最近、学校に外部の方がボランティアとして参加することは珍しくなくなってきました。
学習のお手伝いとして社会人や高齢者の方などが学校に入ることも多くなり、わが町の小学校にも昔の遊びを教えたり、昔話をしたりする先生役として高齢者の方が入っている事例も少なくありません。
きっかけは子どもたちの善意からでした。
私が教育委員会に勤めていた頃ですので、20年ほど前の話になります。
「お、今日もやってるな、結構降ったからなあ」
わが町は冬にはそこそこの積雪があるところで、雪かきは結構な手間です。
町内の小学校では、朝早めに登校した高学年の子どもたちが、レクリエーションも兼ねて校内の雪かきをするのはおなじみの光景でした。
「はは、ほぼ雪合戦だな...おや? あの子たちは学校の外でも雪かきしてるぞ」
見ると、学校の敷地外でも雪かきをする子どもたちの姿がありました。
そこは高齢者の方たちが共同生活をしているグループホームでした。
「おや、あそこでも...全部の家ってわけじゃなさそうだな...」
他にも何軒か、子どもたちが玄関先の通路を作っている光景が見られました。
仕事柄、学校に出かける機会もあるので、件の小学校に出かけた折に、見かけた様子について先生に尋ねてみました。
すると、こんな話を聞かされました。
「今年最初の雪かきのときでした。ワイワイと雪かきをしていたときに、誰かが、〇〇さんのうち、おばあちゃんだけだから雪かきしてあげようよ、と言い出したんです...」
すると賛同者が次々と現れ、だったらお年寄りばかりが住んでいるグループホームの周りもしてあげようとなったそうです。
さらにそこから、□□さんのところも大変そうだよ、などと口々に候補が挙がったようです。
それで、雪が降った日は学校ばかりでなく、近所の雪かきが大変なお宅も作業をするようになったとのことでした。
「雪かきをしたお宅からは、感謝の言葉をかけていただいたり、学校にお礼の電話があったりして、子どもたちもやりがいを感じているようです」
このお話を伺って、いいことをしていますね、素晴らしい、と称賛しただけでこのときは終わりました。
しかしある日、その学校から教育委員会に電話が入りました。
「あの、雪かきをしているお宅の方から、お礼に植木の剪定をしたいとの申し出があったのですが...」
元植木職人の方がいて、お礼として奉仕作業したいとの申し出だったそうです。
植木の剪定は教育委員会で業者を選定して行っていることなので、勝手にやるのもどうか、との判断で、教委に打診されたわけです。
教育委員会としてもせっかくのご厚意を断るのは申し訳ないので、前例はありませんでしたが、業者を頼まずにお願いすることにしました。
すると、草取りもしてあげたい、とか、カーテンが破れているようだから修繕してあげたい、など次々に申し出る方が出てきたそうです。
当時、こうした学校とは直接関係のない方による奉仕作業の取り組みは珍しく、美談として町の広報などにも取り上げられ、耳目を集めました。
この学校ではこの縁を生かして、学校行事に高齢者の方を招待したり、最初にもお話した通り先生役として授業に参加されたり、良い関係が続いています。
ここ数年はコロナ禍で、こうした行き来が途絶えがちになったのが残念です。
高齢者の方の中には学校の役に立っていることを生きがいにされている方もいると聞きます。
早く世の中が落ち着いて、こうした善意の交流がまた盛んに行われるようになることを願っています。
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