<この体験記を書いた人>
ペンネーム:とらとら
性別:女性
年齢:53
プロフィール:アラフィフ兼業主婦。今度ヘアドネーションに挑戦しようと思っています。
25年ほど前、まだ私が夫(現在55歳)と結婚したばかりの頃の話です。
私は当時、ひどい頭痛に悩まされていました。
最初は「肩こりかな」なんて思っていたのですが、痛みはどんどんひどくなり、とうとう仕事に行くのさえもつらく感じるようになってしまいました。
そんなある朝、私はあまりの頭痛に起きられなくなってしまい、夫が仕事を休んで付き添ってくれるということで病院に行くことにしました。
そこで、脳に腫瘍ができていると診断されたのです。
「まさかそんなひどいことになっていたとは...」
言葉を失いましたが、幸い手術で摘出すれば大丈夫とのこと。
私はそのまま入院することになりました。
しかしその入院後、どうしても受け入れられない問題に直面します。
手術のため、髪を剃らなければならないことでした。
今思えば、そこまで思いつめることでもないと感じるのですが、当時の私には髪を剃ることに対してかなりの抵抗がありました。
幼い頃からくせ毛だったので、人一倍、手入れを怠らないようにしてきました。
そのため、髪を褒められることが多かったのです。
夫もお付き合いしていた頃から私の髪を褒めてくれていて、いくら手術のためとはいえその髪を剃ることが本当に苦痛でした。
そしてある日、私は病室で「髪を剃るのが嫌だ」と夫に涙ながらにこぼしてしまいました。
夫は、その日は優しく泣きじゃくる私を慰めてくれたのですが、次の日お見舞いに来てくれたときには、笑顔でバリカンを鞄の中から取り出しました。
「僕が切ってあげるよ」とでも言うのかと少し身構えていると...なんと夫は私の目の前で自分の髪を剃りだしたのです。
この行動に私は目玉が飛び出るかというほど驚き、しばらく何も言えず口をポカンと開けたまま。
夫は髪を剃り続け、いびつな坊主頭になったところで「ほら俺もお揃いになったけん。手術、一緒に頑張ろうや」と言ってくれたのです。
この瞬間、私はぶわぁっと涙があふれてくるのを止めることができませんでした。
夫に涙をぬぐってもらいながら、やってきた看護師さんに髪を剃る旨を伝えました。
病室で髪を切ってしまった夫は、看護師さんに少し怒られてしまいましたが、その看護師さんも夫が帰った後で「えぇ旦那さんやね」と言ってくれました。
その後、無事手術も終えた私の髪は今では元通りになっているのですが、髪を梳いたりお風呂場で頭を洗ったりしていると、つい思い出してそのたびに夫に感謝しています。
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