<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:散歩が趣味ですが、その途上で小さな子どもの姿を見ると、そのかわいさについつい足を止めて見入ってしまいます。
2022年の7月のことです。
その日は、妻(58歳)の買い物の付き合いで大きな街まで出かけました。
「服、見ていきたいんだけど」
との妻の言葉に、いつもどおりの返事をしました。
「じゃあ1時間後、駐車場にいるよ」
妻の買い物に付き合うのは退屈なので、こんなときはいつも散歩タイムと決めています。
大きな街なので、その都度いろいろな方向に向かうといつも新鮮な出会いがあります。
「今日はこっちに行ってみるか、住宅街の中も面白そうだ」
住宅街に入る道を進んでしばらくすると、保育所がありました。
私は小さな子どもが遊んでいる姿を眺めるのが大好きなので、少し中を覗いてみたくてそのフェンスに近寄りました。
フェンスの向こうは園庭になっていて、カラフルな帽子をかぶった子どもたちが走り回っていました。
「こんにちは!」と、元気いっぱいな声が下から響きました。
びっくりしながら目線を下ろすと、5歳ぐらいの男の子がこちらを見上げています。
「やあ、こんにちは、しっかりあいさつできてすごいね」
そう返事をしながら、こちらをまっすぐ見上げる男の子を見ていました。
「...何か、持ってるの? 大事なものかな?」
男の子は両手で何かを包み込むようにしていました。
すると、とても得意そうな顔で、「おじさん、ダンゴムシ知ってる?」そう問いかけてくるのです。
男の子の得意そうな顔を頬笑えましく感じながら、「知ってるよ。なんで?」と聞き返したところ、さらに得意そうな顔をします。
「僕ね、こんなに持ってるんだよ」
得意そうな男の子が広げた両手の中には、コロコロと転がっているダンゴムシがたくさん入っていました。
「すごいね! たくさんいるんだ!」
「僕ね、もっとすごいの持ってるんだよ、すっごく大きいダンゴムシ!」
大げさに驚いて見せると、ひどく興奮した様子でまくし立ててきました。
「待っててね、見せてあげる!」
男の子はそう言うと、また両手にダンゴムシを包み込んで、建物のほうに走っていきました。
男の子の姿が建物の中に入るところまで見ていましたが、その後はどんなすごいダンゴムシが出てくるのかと想像しながら、フェンスに寄りかかって待っていました。
ところが、あれからなかなか帰ってきません。
「どうしたのかな? ダンゴムシが見つからなくなっちゃったのかな...」
ちょっと心配しながら建物のほうを見たそのときです。
「僕が鬼だよ!」
園庭のほう、男の子が入った建物とはまるで違う場所からさっきの男の子の声が聞こえてきました。
そこではさっきの男の子が、友だちと一緒に鬼ごっこに興じている姿がありました。
「何だ? ダンゴムシはどうなっちゃったんだよ...」
どうやら鬼ごっこのお誘いを受けて、ダンゴムシの件は雲散霧消してしまったようです。
手に持っていたダンゴムシをどうしたのか、自慢の巨大ダンゴムシはどうなったのか...。
知る由もありませんが、夢中になって走り回っている男の子の姿からは、心底鬼ごっこを満喫しているのがわかりました。
「...そういえば俺も、子どもの頃は気になることにはすぐ飛びついちゃったよなあ...」
自分から声をかけたくせに、すっかり私のことを忘れて、今の遊びに夢中になっている男の子の姿を見て、そんなことを思い出していました。
好きなことに素直に取り組みながら、のびのび育ってほしいなあ、としみじみ思いながら、その姿をしばらく眺めていました。
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