余命わずかな義父が「どうしても伝えておきたいことが」と私と呼ぼうと...一度も会えなかった後悔

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:くもりのち晴れ
性別:女性
年齢:65
プロフィール:78歳の夫と2人暮らしの会社員です。

余命わずかな義父が「どうしても伝えておきたいことが」と私と呼ぼうと...一度も会えなかった後悔 95.jpg

40年ほど前、現在78歳の夫とお付き合いをしているときの話です。

まだ20代、若くて結婚など頭になかった私は、夫の求婚をのらりくらりと理由をつけてかわしていました。

当時、20代の義弟家族(夫は6人兄妹で、兄が2人、弟が2人います)と交流があり、当然私たち2人が結婚するものだと思っていた義妹(きみさん)は義父に話したらしく、晩婚の息子(夫)を心配していた義父は「ぜひ一度会いたいものだ」と常日頃から言っていたようでした。

そんな中、義母が早くに亡くなった後、再び花を咲かすこともなく男やもめだった義父が病に倒れました。

義弟夫婦は頻繁に義父の様子を見に行っていたようです。

末の義弟が同居していたのですが学生だったため、義父の世話を引き受けていたのは2番目の弟の嫁のきみさんでした。

よくできた人で、義兄である夫にも何かと連絡をしてきてくれました。

いよいよ危ないというとき、病院のベッドの上で義父は言っていたそうです。

「どうしても言っておきたいことがあるので、きみさん、くもさん(私)を連れてきてくれないか」

そう頼まれたらしく、きみさんから我が家に電話がかかってきました。

「義父さんが会いたがっています。会ってあげてくれませんか?」

きみさんは懇願するような口調で、電話口で頭を下げているのではないのかとさえ思いました。

私は迷いましたが、まだ結婚する覚悟もできていないのに会えないと思ってしまいました。

「ごめんなさい、まだ(結婚の)意思が固まっていません。もし(夫と)お付き合いを解消することになれば、お義父様を裏切ることになりますので、私にはできません」

それから間もなくして逝った義父の葬儀にも、私はもちろん参列することはありませんでした。

夫から聞かされた義父の葬儀は、良い意味でも悪い意味でも賑やかだったそうです。

大勢の参列者が帰ったあと、親族だけになったとき、一度たりとも義父の世話をしなかった、夫の長兄と次兄(夫は6人兄妹です)が遺産相続にだけ入り込み喧々囂々と罵り合い、きみさんは泣いていたと言っていました。

義父は、三途の川もうっかり渡れないと嘆いていたかもしれません。

もちろん、義弟夫婦も私たち夫婦も義実家の遺産を一円たりとも受け取っていませんし、受け取る気もありませんでした。

それにしても一度もお会いしたことはない義父が、私に何を話したかったのか今でもときどき考えることがあります。

結婚して過ごしてきたこれまでが、果たして義父の望んだ結果になっているのかどうかさえも不明のままです。

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