<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ころちゃん
性別:男性
年齢:55
プロフィール:昔より日差しが強くなったと感じる50代半ばにさしかかりました。
現在55歳の私が、10年ほど前に勤めていた学習塾での話です。
私は個別指導教室の責任者でしたが、その日は中学校の定期テスト前で、早い時間から数名の中学生が自習に来ていました。
私は仕事の合間に何度か自習スペースを回り、自習を見守ったり質問を受けたりしていました。
そのとき、40歳くらいの母親と小学生の子どもがふとやって来ました。
直観的に嫌な感じが...というのも子どもの様子から乗り気でないのを感じたからです。
嫌がる子どもを母親が無理に連れてきたのかもしれません。
そして、カウンターに座った途端、母親はまくしたてました。
「今、5年生で中学受験を考えてるんだけど、ここならどの辺の学校まで行かしてもらえます?」
現在の学力を知らないのに答えられるわけがなく、少しずつ話を進めようとしましたが、母親は黙りません。
「とにかくできないんです。もう本当にばかで理解力がないっていうか」
たまに見かけるネガティブなタイプの人だと思い、私はなだめながら話を好転させようとしました。
しかし、話し出すと止まらないタイプなのか、彼女の口は止まりません。
「何度言ってもできないんですよ。性格もどうしようもなくて、嘘はつくし、さぼることばかり考えてるし」
すると、子どもの反撃が始まりました。
「それはおかんが変なことばかり言うからや」
「また人のせいにする」
「そうやっていつも怒鳴ってばかり」
「それはあんたがちゃんとしないからや」
「ちゃんとやろうとしても、すぐ文句言うから」
「あんたはいつも...」
私は無理に笑顔を浮かべて「まあまあ」と割って入り、子どもに話しかけました。
「勉強しんどい?」
「うん、しんどいけど、宿題とかはちゃんとやろうとしてます」
彼の態度は、私に対しては素直です。
「もっとちゃんとしたいけど、なかなかできなくて」
「それだけで偉いぞ。中学受験はしんどいから、そういった真面目な姿勢が一番だよ」
「でも、ぼく、まだ受験したいかよく分からないんです」
「そうか」
やはり中学受験のことなどよく知らず、その覚悟もできていない子どもを親が先走って引っ張っているパターンのようでした。
母親もここまで来て後には引けなかったのか、言い争いが始まりました。
「今さら何言うんや!」
「勝手に決めたんやろ!」
収拾がつかないので、私は一旦帰宅してもう一度家族で話し合うように勧め、二人はあいさつもそこそこに怒鳴り合いながら塾を後にしました。
よりによって、自習の生徒がいる時間にとんだハプニングです。
私はカウンターを片付けて、自習スペースに戻りました。
「先生、あんな母親、あの子が可哀想です!」
一人の生徒が訴えるように言いました。
「そうです。あんな親が子をだめにするんだと思います!」
他の生徒も言い出します。
聞こえていることは分かっていましたが、私は彼らを制しました。
「まあまあ、君らはそんなことより勉強に集中しなさい」
「でも先生、あんなの我慢できませんよ」
生徒たちも引きません。
「先生だって、絶対俺たちと同じ気持ちだよ。ね、先生、そうでしょ」
うんとも言えず、私は笑ってごまかしました。
「先生、もっとはっきり言ってやったほうがいいですよ。あなたの子育ては間違ってますって」
「分かった、もういいから、とりあえず勉強を続けなさい!」
私は笑いを我慢するのが精一杯でした。
ほんの数分のお目見えで、中学生からもこんなに非難が噴出する母親って本当にどうなのでしょう。
家庭生活の全てを見たわけではありませんが、第三者からこうも非難されるのは親として何かしら問題があるからではないでしょうか。
今となっては、あの子が健やかに成長していることを祈るだけです。
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