「仕事は見て盗むものだ」という風潮の古い職場。退職を考えていた私に先輩がかけた「ある言葉」

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:ぴち
性別:男性
年齢:52
プロフィール:社会人になって30余年。いろいろな経験をさせていただいたものです。

「仕事は見て盗むものだ」という風潮の古い職場。退職を考えていた私に先輩がかけた「ある言葉」 24.jpg

長年、スーパーなどでの販売業務に携わっています。

スーパーでの販売の仕事を覚えるにあたり、半年から1年くらいのサイクルでさまざまな部門の経験を積ませる手法を取ることがあります。

私が25歳で初めて販売の業界に入ったとき、一番最初に配属されたのは「青果部」でした。

青果物の販売に強みを持つその会社では、青果の仕事をまずは覚える、ということが慣習になっていました。

市場での仕入れ、売価設定、陳列、袋詰めなど、青果に関わる全てが初体験であった私は、とてもワクワクした気持ちでいました。

しかし、現実はとてもワクワクできるようなものではありませんでした。

早く仕事を覚えたいがために、先輩たちに仕事のやり方など分からないことについて質問すると、大抵は「他の人に聞いて」と言われました。

まるっきり無視する先輩もいました。

後から聞いた話では、「仕事は見て盗むものだ」という悪い風潮がこの業界には根強く残っていたようです。

質問されても答え方を知らない、あるいは答えたくないといった古い気質の人たちがまだまだ多いのだそうです。

しかし、教えてください、と頭を下げている人に対してそうした態度をとるなんて、言語道断ではないのか? 

そうした怒りと、何とも言えない虚しさで頭の中が一杯になってしまった私は、入社してたった1カ月で退職を意識するようになりました。

そんな折、普段接する機会のなかったK先輩に声をかけられました。

「ゴールデンパイン、食べたことある?」

K先輩は1本のパイナップルを私に差し出しました。

当時、まだ流通量の少なかったパイナップルです。

「おいしいから食べてごらん」

続けてK先輩は「最近元気ないみたいだけど、悩みとかあるなら聞くよ?」と言ってくれました。

私はそれまで抱いていた不満を吐露しました。

先輩は全て聞いてくれた上で、まずはいろんなものを食べて自分で味を覚えること、いろいろなスーパーに足を運んで見学することを勧めてくれました。

そして「辛いときはおいしいものを食べて元気を出せ!」と教えてくれました。

その日、自宅に帰って早速食べたそのパイナップルは、今まで食べたことのない美味しさでした。

その後、私はK先輩の勧めに従い、身銭を切っていろんな果物を買っては食べ、味を覚えていきました。

近所だけではなく、時には電車や車でいろいろなスーパーに出かけ、多くのことを見学しました。

その甲斐あって、今でも販売の仕事に携わることができています。

K先輩が教えてくれた「おいしいもので人を元気にする」ことを目標に、今でも頑張り続けていられることに感謝です。

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