<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:バンドブームが言われ始めた学生時代、気の迷いからバンド活動をしていました。今でも音楽は大好きです。
最近はコロナのせいで、町の文化的行事は軒並み中止です。
コロナ禍以前は秋ごろには町民文化祭が行われ、町民の様々な文化的な取り組み、絵画や手芸などの作品展、踊りや楽器演奏などのステージ発表が行われていました。
人が集まることを避ける世の中の流れは、田舎町にも色濃く影を落としています。
まだそんな暗い影のなかった2019年のことです。
町の広報課に籍を置く身としては、取材に忙しい時期でした。
学生時代、ブームに乗ってバンドなどをやっていた時期があり、バンド系には特に興味があります。
ロック系のバンドの発表があるというので、趣味半分で取材をしていました。
「お疲れさまでした。なかなかかっこいい演奏でしたね」
「あざっす。おじさんたちにはうるさいだけでしょうけどね。ハハハ...」
演奏を終えたバンド(20代後半から30代のハードロックのグループでした)を控室に迎えてインタビューを行いました。
「いやいや、私たちぐらいの年代は演歌よりロックですから」
「へえ、そうなんだ、ロックなんか聴くんですか?」
「聞きますよ。ビリー・ジョエルとか、ヴァン・ヘイレンとか...」
メンバーの1人から逆質問され、ちょっと得意げに返すと、こんな言葉が返ってきました。
「ああ、俺の親父も好きっすね。渋いですねえ」
「は? 渋い、ですか...」
ビリー・ジョエルはバラードも有名ですが、ヴァン・ヘイレンはゴリゴリのハードロックです。
渋い、というのとはちょっと違うだろ、と違和感を覚えました。
「ビートルズは?」
相手に続けて質問されて、面くらいました。
「それは、少しは...」
「ですよね! バッチリ世代でしょ!」
ビートルズは私にとっても懐メロの部類です。
通っていないわけではありませんが、バッチリ、とまで言われるのは少々心外でした。
「...いや、最近の曲だって聴きますよ」
あまりロートル扱いされるのも悔しいので、言い返しました。
「へえ、どんなの聴くんですか?」
その頃に話題になっていて、気に入っていた曲名を挙げました。
「RADWIMPSの『前前前世』とか、米津玄師の『Lemon』とか...」
と言いかけると、
「またあ、無理して話題の曲名だけ言わなくてもいいっすよ!」
と鼻で笑われました。
私のようなおじさん(いや、おじいさん?)世代が、最近の曲を気に入っているわけはないと決めつけられているのを感じました。
「聴いてますよ! いい曲です!」
思わず大人気なく声を荒らげてしまいました。
「...」
よほどの剣幕に感じたのか、彼らはびっくりした表情で私を見ていました。
「...いや、あ、その...まあ、話題になってるので、聴くぐらいは、ねえ...」
慌てて取り繕うような言葉を重ねましたが、なんとも気まずい雰囲気に...。
「...えっと、その...バンドの、その、始めたきっかけとか...」
「...え? あ、ああ、それは...高校時代に部活動でね...」
なんとかインタビューを終えて会場を後にしましたが、最近の曲を無理して聴いていると思われる年になったんだなあと、しみじみ感じてしてしまった出来事でした。
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