<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:田舎町ゆえに暗い山道を走るのは日常茶飯事ですが、飛び出してくるのは動物だけとは限らないようです。
今から20年ほど前、家族でドライブに出かけたときのことです。
その日は私、妻(当時40歳)、娘(当時9歳)、息子(当時7歳)で楽しく過ごしました。
帰り道はもうすっかり日が暮れていて、山あいの道は真っ暗。
そのときです。
「うわ!」
ライトに照らされた視界の中を、何かが横切りました。
慌ててブレーキを踏み、車は急停車しましたが「ドン」と何かに当たった感触がありました。
「...びっくりした。ねえ、何かぶつかったよ」
助手席の妻が震える声で言いました。
「やっちゃった...」
何かを轢いたのは間違いないと思いました。
おそるおそるバックミラーやサイドミラー、窓から視認できる範囲を見回しましたが、何も見当たりません。
「動物かな? 動いてたから物じゃないと思うんだよなあ...」
何かに当たったのは確かだと思ったので、降りて確かめることにしました。
助手席から妻も降りて周囲を確認したのですが...。
「...あれ? 何もない...」
車の下側も覗き込んで見ましたが、特に何も見当たりません。
「変ねえ、確かに何かに当たったわよ...」
不思議そうにあたりを見回しながらそうつぶやく妻と顔を見合わせました。
子どもたちはその間も後部座席にいて、不安そうな顔をしていました。
一通り車外を確認しましたが、やはり何も見当たりません。
「...動物かな? かすっただけで逃げたんだよ、きっと」
「...そうね。それしか考えられないわよね」
妻と2人でそう言いながら納得することにしました。
「いやあ、ごめん、ごめん。特に何もないみたいだから、大丈夫だよ」
子どもたちに声をかけながら車内に戻ると、息子はこちらを見ていましたが、娘は後ろを見ていました。
「...ねえ、お父さん...」
「心配させちゃったね。さあ行こう」
娘が何かを言いかけましたが、さえぎって車を出しました。
「え? でも、あの...」
なおも娘が何かを言いかけたので、一応ルームミラーで後ろを確認しましたが、やはり何もありません。
後ろを向いた娘がミラーに写っているだけです。
「...ねえ、お父さん、いいの?」
そのとき、娘がおびえた声で聞いてきました。
「ん? 何が?」
「あそこにいる女の人、置いてっちゃうの?」
耳を疑いました。
慌てて急ブレーキで停車し、改めて車外を確認しました。
やはり何もありません。
「何言ってるんだ?」
「ぶつかっちゃったんじゃないの? 座り込んでたよ...」
娘は今にも泣き出しそうな声で、後ろを指差しながらそう訴えかけます。
狭い道でなんとかUターンして、来た方向をヘッドライトで照らしてみましたが、誰もいません。
「長い髪の女の人だよ、座り込んでたよ...本当だって」
背筋が寒くなりました。
「...でもさ、ほら誰もいないだろ...何か見間違えたんだよ...」
「...でも、ほんとにいたのに...」
目を凝らすように女性を見たという方向を見つめている娘をなだめながら、改めてUターンし、ルームミラーで何度も後ろを確認しながらその場を後にしました。
その後、奇妙なことは起こりませんでしたが、実際何にぶつかったのかは全く分からず、気味の悪い出来事でした。
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