アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。現在は夫婦二人と3ニャンとで暮らしています。今から20年以上前、私の嫁時代の体験を思い出しながら書いています。
【前回】「もう3日もご飯食べさせて貰ってないんです! 助けてください!」弟の嫁母から鬼気迫る電話が/かづ
【最初から読む】アッシー・メッシー・貢君だった彼が突然父に結婚の挨拶! 夫との馴れ初め/かづ
福祉課の担当さんが「虐待ですね。すぐ何とかしないと。そのうち手が出ますよ」と言った事には、私も上弟の嫁母もすんなりと納得できた。
実際に私の目の前で上弟が嫁や嫁母、それに姪へと手を上げた事は無いが、「手を上げかねない」という恐怖を与えているんだろうなと感じる事はあった。
福祉課の方はすぐさま調べてくれて、その場であちらこちらにそれこそ文字通り電話をしまくってくれた。
30分くらい待っただろうか、福祉課の方が私たちの所に戻って来てこう言った。
「ここから、そうですね...。車で高速使っても3時間近くかかるところなんですがそこでもいいですか? ちょっと行ったら隣の県ってくらい遠いんですが...」
嫁母にはそもそも隣近所に友だちというものがいなかったので、いくら遠くてもかまわないと嫁母自身が答えた。
「じゃあそこでいいですね?」
福祉課の方がそう言ったのを聞いて、私と嫁母は顔を見合わせて喜んだ。
「今さっき相談に来てその場で決まるなんて、そんなに早く?」と不思議がる私に福祉課の方は即答した。
「緊急避難ですからね。このまま家に戻せませんでしょ?」
なるほど! その制度を使うのか!
私は頭の中のハテナマークがスッキリした。
ところが福祉課の方の顔が少し暗く、何か言いにくそうに話を続けた。
「それがですね...、入居日が毎月1日になるんですね。ですから、それまでの間はどちらかでお世話いただく必要があるんですが...。そして、本来では娘さんがなるべきところなんですが、理由が理由なので身元保証人はあなたにお願いできますか?」
どこの施設でもそうだとは言わないが、入居できる施設の入居日は毎月1日と決まっているらしく、それまで嫁母はどこかに身を寄せなければならないのだ。
そりゃそうだ。そんなに何もかも都合良くはいかない。
今日相談に行って、その場で施設入居決定になる事自体がありがたい事なのだ。
福祉課の方が改めて私に向きを変え、頼むようにこう言った。
「入居日まであと3週間以上ありますけど、それまであなたの所でお世話になれませんか?」
突然の事とは言え、ここに連れて来たのは私だ。
この場で断ったとして嫁母が身を寄せるところは無く、ましてや嫁母は無一文なのだ。
福祉課の方と嫁母の目が私に向けられ、嫁母の顔は泣きそうになっていた。
「わかりました。今日から私の所で預かります」
私がそう言うと、福祉課の方と嫁母に安堵の空気が流れた。
そして身元引受人に関しては支払いなどの関係もあり、ましてや実の娘がいるので本来であれば上弟嫁がなるべきところ、その娘からも逃げなければならないので私しかいない。
私が一瞬躊躇していると、福祉課の人は色んな書類を揃えて出してくれた。
「この手続きをしてもらえれば、本人さんの施設利用料などは福祉から出ますからあなたの負担はありません。ご本人さんからすれば娘のご主人のお姉さんなので、本来の筋ではありませんからね」
ありがたかった。
いくら私自身がここに連れて来たとは言え、施設利用料を毎月私が支払う事になる事までは考えていなかった。
「では○月○日に入居と言う事で、またこちらからご連絡させていただきます。施設のパンフレットもお渡ししておきますね」
区役所を後にして車に乗った所で、嫁母は泣きながらだが嬉しかったのだろう興奮していた。
「お姉ちゃん! ありがとうございます! あぁぁ、本当にありがとうございます! 今日行って今日入るところが決まるなんて...」
「おばちゃん、これから急ぐからな! 家に戻って荷造りするで! 衣装ケースってあったやろ? あれに自分の着替えやらなんやら出来る限りの物積まなあかんからな!」
それからが忙しかった。
夕方のご飯の時間頃に上弟達が戻って来るとはいえ、それはあくまでも予定なので、最悪荷造りしている途中で戻って来られて鉢合わせにでもなったら計画はパァになってしまう。
「おばちゃん、2度とここには戻って来られへんのを覚悟して荷物詰めてよ!」
再び自宅に戻ってきた嫁母にそう言うと、プラスチックの衣装ケースに衣類などを詰め込みだしたが、それは2つだけだった。
遠慮して最小限度にしたのではなく、元から嫁母の物自体が少なかったのだ。
上弟と同居してから既に数年経っているというのに。
私が衣装ケースを車に積みに行っている間に、嫁母に「お姉ちゃんの所に行きます」とだけ置手紙をするように指示した。
なぜなら、家に帰って来て嫁母がいない事はすぐ分かる訳で、尚且つ嫁母は近くに知り合いもいないので、家出か事故か事件か?などとめんどくさい事にならないようにするためだ。
私は自分の家がある地域の管轄の警察署に向かった。
状況を説明し、区役所で「虐待ですね」と言われた話もし、緊急避難として保護をしている嫁母をもしも上弟が連れ戻しに来た際には連絡するので直ぐに来てほしい旨を伝えた。
「よっしゃ! 来たら電話してきて! すぐに行ったるから!」
私は日頃から子どもの武道の指導をしていた関係上、知り合いの警察官が何人もいるのが今回は大いに助かった。
恐らく家に帰って来た上弟が置手紙を見れば、当然私の所に怒りMAXで電話を掛けて来て、その後嫁母を連れ戻しに怒鳴り込んで来るに決まっている。
怒り狂った上弟の事だから、うちの隣近所に迷惑を掛けようが知ったこっちゃないと暴れるに違いない。
警察署に入って行った私に驚いていた嫁母だったが、コレコレシカジカと説明すると「お姉ちゃん、よく思いつくねえ!」と感心していた。
いや、感心されても...。
さぁ、準備万端整った! 来るなら来いだ!!
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