認知症の母に申し訳なかった、特別養護老人ホーム生活

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ペンネーム:鞠果
性別:女
年齢:52
プロフィール:両親は既に他界し、実家はありません。全力で両親の介護をしてきました。望んだわけではありませんが、現在、ひとり暮らしです。

※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。

母が特別養護老人ホーム(特養)へ入所したのは70歳、私が43歳の時です。65歳頃から、お財布や物を頻繁に紛失し、父が隠したと攻撃的な口調で責め立てるようになりました。家族の疲労もピークとなり、施設を探し回りやっとのことで特養へ入所することができました。

一日中怒っているおじいさん、大きな声で歌を歌っているおばあさん、じっと一点をみつめてソファに座り続けているおばあさん、寝たきりの方。母の入所した特養は状態の重い方が多く入所していました。
食事の介助、オムツの取り換え、入浴介助、リハビリ、レクリエーション、洗濯、食後の歯磨き、着替えなど、スタッフの仕事は次から次へと尽きることなくあります。私が母の面会時だけでも、その重労働を察することが出来、入所者の数に対しスタッフが足りないのではと感じました。

母は、オムツに排便してしまうことも多々ありました。臭いでわかるのですが、時間にならないとおむつ交換をしてくれません。これも忙しいあまり手が回らないためでしょう。

また、施設は経費節減の為か、真夏でもエアコンをかけていませんでした。さらに、入浴は3日に1度です。7月の蒸し暑い日曜の午後、私が面会に訪れた時、母はセーターを着ていました。体中汗でびっしょりです。私は、すぐ着替えをさせました。認知症のため、母は自分で服を脱いだり、暑いと訴えることができません。真夏にセーターを着ていることの異常さに気付いてもらえないのが哀れで、涙が出てきました。多忙さと、認知症故に会話が成立しない現実があるためか、スタッフは介護しなければならない「自己表現の出来ない老人」に対し、気配りや声掛けをする時間が足りていないのではと感じました。

認知症とはいえ、人間です。大事な親を預けている家族としては、もっと声をかけてほしい、たとえわからなくてもコミュニケーションをとって欲しいと、いつも願っていました。

でも、言えませんでした。 お金があれば有料老人ホームに入れてあげられますが、私の家計ではその選択肢を選ぶことが出来ませんでした。

母は、ベッドだけがプライベート空間だった施設の4人部屋で息を引き取りました。母には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
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