がんに特化した保険があることで多くの方はご存知でしょうが、がんの治療にはとてもお金がかかります。
これは標準治療(病院で健康保険の効く治療)でもかなりの金額でした。
前回の記事:乳がんの手術。乳房温存か全摘出か再建か。私の決断/なないお
最初に驚いたのは、検査ですらとても高いこと。乳がんの場合はマンモグラフィやエコー、直接針をさして組織を取る検査を経て、がんに間違いないだろうとなった後に全身の精密な検査を行います。他に転移がないかどうかを見るためです。
PETと呼ばれる検査で、一回に健康保険で3割負担でも3万円、MRIや他の検査も同時にやりますので5万円ほど必要といわれました。私はこの検査を最初と抗がん剤後の2回行いました。
実は、私の場合、がんが分かった前年に離婚し母子家庭になったところでした。専業主婦でしたので仕事も離婚して始めたばかりでした。母子家庭で前年度に低所得ですと、ひとり親の医療受給者証(1割負担)に一ヶ月にかかる自己負担分の上限があります。これがあったおかげで自己負担は上限までで抑えられ、なんとか治療することができました。
私は抗がん剤の副作用がきつく仕事を続けられなかったので、わずかな貯蓄を切り崩しながら子供を育てる生活。この上医療費が多くかかれば生活は破綻していたと思います。
ですので実際に私は3割負担の金額を払ってはいませんが「本来ならどれくらいかかったのか」でお話させていただきます。
もちろん乳がんでもステージやがんのタイプによって治療は変わってきます。私の行った2016年の標準治療の場合のお値段です。
抗がん剤治療も種類ごとに最初に一泊二日の入院、抗がん剤は3ヵ月ごとに2種類やったので手術とあわせて3回の入院でした。
最初の一回は入院ですがその後は通院で受ける抗がん剤は、一回に1万円。最初に受けたAC療法は3週間ごとの4回、その後のパクリタキセルは毎週なので12回、これだけでも16万円です。毎回医師の診察や血液検査も入りますのでそれ以上かかります。
その後の放射線治療は病院の休日以外、毎日通わなければなりません。一回が6千円くらい、全部で25回受けました。
この後のホルモン治療はお薬を飲むだけですが、再発予防のため10年間続けることになっています。(その人の年齢や状態によっては5年)私は現在アリミデックスという薬を飲んでいますが、薬価が高く一か月分3割負担で4千円ほどかかる薬です。10年分を計算するとアリミデックスだけで48万円です。その他今も残る後遺症を抑える薬ももらっています。
検査、入院、抗がん剤、手術、放射線治療をした約一年間でおよそ50万円、その後の10年の薬で50万円、メインの治療だけであわせて100万円ほどかかる計算になります。
このほか、脱毛してしまうためかつらや帽子、術後の補正下着なども買わなくてはなりません。通院も術後のリハビリなど色々ありました。
これにプラスして、私のように治療中に仕事が続けられなくなればその間の生活費、病院に通うための交通費(2度目の抗がん剤はアルコールが入っているため自分で運転することが出来ませんでした)、日々の生活も動けない日が多かったので料理が出来ず、食費も多くかかってしまいました。
私の場合、がん保険などの医療保険は結婚していた時は加入していたのですが、支払いが夫名義だったことや母子家庭で生活に余裕がないので全て解約済みでした。解約してから1年足らずでがんが見つかってしまいました。
社会福祉の制度、みなさまに支えられて私はなんとか治療をすることが出来ましたが、病気は誰がいつかかってしまうかわかりません。医療は日々進化し変わって行くでしょうが、いざという時のための備えは大切だと思います。
>>次回へ続く
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医療監修:すわやまクリニック 田島厳吾 院長
アラフィフの乳がんサバイバーです。発達障害児をふたり育てるシングルマザー。アスペルガー症候群・ADHDの娘は12歳、自閉症スペクトラムの息子は10歳。心臓病の私の父親(76歳)も同居。パート勤務、ブログなど文章を書いて暮らしています。
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