皆様こんにちは、『ぼっちシニアの幸せ探し貯金日記』の管理人"くるぴた"です。
【前回】贈り物のケーキをきっかけに不倫を隠さなくなった母。まるで共犯者の気分で
ごく普通の主婦だった母ですが、熟年不倫をしていました。
子どもの私は母本人からよくそのことを聞かされていたものです。
両親が諍いを起こすことはよくありましたが、子どもの私たちにとってはそれがいつもと変わらない平凡な日常でした。
その頃、私は一つ、大きな疑問を抱えていました。
それは、「母がどこで不倫相手と知り合ったのか」ということです。
母はパートで働きに出てはいましたが、話を聞く限り、不倫相手はパートの人ではなさそうだし、どうやって知り合ったのか、とても不思議だったのです。
母が社交的でよく外出する人なら、何らかの出会いがあって不倫へと走った、というのも分かります。
しかし、母は決して外交的ではありません。
私が実家にいる間に我が家に母の友人が訪ねて来たことは一度もありませんでした。
それで、ある時、母が不倫相手の話を私にしているときに、思い切って聞いてみたのです。
「お母さんさあ、何でその人と付き合うことになったの?」
「あれだわ、○年前にA子さんが紹介して来たんだわ」
驚きました。
A子さんは、うちによく来ていた化粧品のセールスウーマンです。
黒縁の眼鏡を掛けて、いつも赤い口紅をしっかり引いていて、子どもの目から見ても口が達者で押しが強いタイプの人でした。
学校から家に帰ると、玄関先にアタッシェケースが開き置かれて、たたきの部分でしゃがんだA子さんが、玄関マットの上に座り込んだ母に化粧品を説明している姿があり、居間のサッシ側に回り道して家に入る、ということがしばしばありました。
昭和の世にはセールスマンが個別のお宅に訪問販売するのは、よくある光景でした。
今ではすっかり廃れた文化になりましたが......
姉妹も友人も訪ねてこない母の知人としては、一番家に来ることが多かったと思います。
私はてっきり (セールスの人だけど、お母さんと仲が良いのかな? 友達なのかな?) などと呑気に考えていました。
しかし、後にその様相は変化していきます。
だんだん母がA子さんに居留守を使うようになっていったのです。
「あの人が来たら、いないって言っといて」と頼まれたこともあります。
「あたしはあの人のこと、あんまり好きじゃない。もう化粧品だって買いたくない。その辺に売ってる安いヤツでいいんだわ」
母がそうした言葉を口にするようになって、私が高校を卒業する前には完全に縁が切れていました。
そういえば、うちは私が高校3年生の時に建売住宅を買って引っ越しています。
当時は母がすごく家を欲しがっていました。
朝食の片付けをした後、食卓のテーブルで新聞に挟まっていた不動産のチラシをチェックする姿を、よく目にしたものです。
母が家を欲しがる理由はたくさんあったと思われますが、A子さんから離れたいというのも、あったのかもしれません。
2人の間で具体的にどういうやり取りがあって、決別に至ったのか......
そこまではさすがに詳しく聞くことはなかったので、母が鬼籍に入った今では完全に謎です。
ただ、思えば母はあまり他人の前で自己主張をするタイプではありませんでした。
セールス業で弁の立つA子さんに押し切られて、意に染まないことをしたこともあったのかもしれません。
しかしA子さんと会わなくなってからも、母は不倫相手とは続いていて、後に私はその人と対面することになってしまうのですが......
それはまた、別の機会に。
あれから四十数年が経ちますが、A子さんが扱っていた化粧品は今でも有名どころの物だったので、そのメーカーさんの化粧品をCMや店頭などで見かける度に、あの頃を思い出してしまい、複雑な気持ちになるのでした。
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