皆様こんにちは、『ぼっちシニアの幸せ探し貯金日記』の管理人"くるぴた"です。
ここでは昔、結婚生活中に起こった「おいおい、ちょっと待て」と思うような出来事などを中心に書いていきます。
【前回】言葉の持つ力は侮れない。母の離婚話や結婚生活の愚痴を聞かされて育った私が辿った道は...
私の父は昭和一桁、母も昭和十年代生まれの戦中派。
父が家にあまりお金を入れなかったこともあり、私や弟達は誕生日にとくにプレゼントもケーキもなく過ごしてきました。
まだそういう家が珍しくなかった時代でもあります。
ケーキはクリスマスだけのもの、そう思って日々暮らしていたのですが......
私が高校生くらいになったある日、母が突然バースデーケーキを持って帰宅してきました。
その日は母の誕生日。
そう、そのケーキは母のものだったのです。
苺と生クリームのホールケーキに載せられたチョコレートのプレートには
『◯◯子さん たん生日おめでとう』
と白い文字が書かれていました。
蝋燭も母の年齢の下一桁の数が、箱に添えられています。
子どもの誕生日にカットしたケーキすら買ったことがなかった母の、本人のバースデーケーキ。
私や弟は面食らいながらも、いきなり豪華なおやつが現れて、ちょっと興奮していました。
「お母さん、これどうしたの?」
「会社の人達が、皆でお母さんに買ってくれたんだよ」
弟の質問に、そう答える母。
当時の母は30人くらいが勤める規模の工場で、パートをしていました。
ずいぶんアットホームな会社なんだなあとは思ったものの、当時はとくに疑いもせず、喜んでケーキを食べたのですが......
自分が就職する年齢になってみると、一介のパートタイマーである40代の子持ち主婦に、わざわざホールケーキを買うような職場など、普通はありません。
世間は広いので中にはそういう会社もあるかも知れませんが、何度か母の勤め先に用事があって行った際も、そんなに横の繋がりが強い印象はありませんでした。
それで、しばらく経ってから、母に尋ねてみたのです。
「お母さんさあ、2、3年前にお母さん用の誕生日ケーキ持ってきたことあったじゃん。 あれって、本当に会社の人がくれたの?」
母はしばらく黙って、何か言い訳を考えていた雰囲気がありました。
が、すぐに面倒になったのか、こんなことを言ってきたのです。
「あれは、お母さんが今付き合っとる人から、もらったんだわ」
一瞬、目が点になりました。
母は美魔女でもなんでもない、ごく普通の40代主婦。
まさかそんな答えが返ってくるなんて、欠片も考えてなかったからです。
どう返事をしたらいいのか、すごく困りました。
娘として、母の不倫に対して嫌悪感が全く無かったかといえば、嘘になります。
しかし、父親の素行を鑑みると、一概に母を責められる気もしません。
そして現実問題として、もしもこの件が露呈して、両親が離婚に至った場合、私達子どもがどうなるか...... 正直、あまり家庭を顧みない父に引き取られたら、とても苦労をする未来が脳裏に浮かびます。
かといって母は経済力がない上に、それほど母性愛が強いタイプでもありません。
ほぼ間違いなく姉弟はバラバラになって、両親のどちらかに引き取られることになります。
私は一応一人暮らしできないこともない年齢ではありましたが薄給でしたし、他の二人はまだ小中学生。
いろんな方向から考えると、口をつぐむしかありませんでした。
ですが、それ以来、別の方向で私は困ったことになりました。
母が私に不倫を隠さなくなったのです。
さすがに弟達にはしっかり隠していましたが......
「あっちの人の家は豪邸だ、うちは小さい建て売りで恥ずかしい」
「あっちの人は夫婦仲は良いから、夫婦で旅行したりして羨ましい」
などと、まるで親しい友人にでも話すような気安さで、いろんな話を聞かされるのです。
母としては、秘密としてずっと一人で腹の中に抱えているより、誰かに話すことでむしろ気分的に楽になった様子さえありました。
しかし、こちらとしては複雑です。
父は確かに碌でもないと言える人だったけれど、母の不倫だって褒められたようなことじゃありません。
不倫話を聞くことで、なんだか自分も共犯者にさせられたようで、なんとも居心地が悪い日々を送ったのでした。
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