性別:女
年齢:50
プロフィール:現在は夫と大学生の子供二人と暮らしています。持病を抱えた義父の看病と認知症の義母の介護経験あり。
※ 毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。
◇◇◇
義母の認知症は少しずつゆっくりと進行しているようで、気づいた時にはふと、思いついたように「家に帰る」と言い出すようになっていました。「おかあちゃんが待ってるから、家に帰る」と家を出ようとするので、玄関のドアには内側の上の方に鍵を付けて、普段、義母が家にいるときにはその鍵をかけるようにしていました。
ある日、もう少しで主人が帰宅する時間ということもあり、私はうっかり鍵をかけるのを忘れてしまいました。気が付いた時には、義母の靴と杖が玄関から消えておりました。私も家にいましたが、音をたてないようにそっと出て行ったのでしょう、全くわかりませんでした。
あわてて近所を探したのですが見つからず、途方に暮れていた時、一本の電話が。それは、ご近所とはいえ、見ず知らずの方からでした。
なんと義母がその方の家に訪ねて来たというのです。慌てて場所をきき、迎えに行くと、なんとまあ、義母が優雅にお茶をいただいておりました。
そのおうちの方の話では、呼び鈴が鳴ったので出ていくと、義母が「ここは〇〇さんのお宅ではなかったかしら?」と。そのお宅というのが賃貸マンションということもあり、ひょっとして昔住んでいた方をたずねて来られたのかもと思ったそうです。でも、やっぱりなんだか様子がおかしいということで、わざわざ家にあげてくれ、義母が持っていた、杖にかかれた電話番号に電話をしてくださったのです。
「あら? お迎えの方?」と平然とする義母に家族全員、大いに脱力しました。「もう絶対鍵をかけ忘れない」と強く思った一日でした。
本当にその方にはただただ感謝です。もちろん後日、菓子折りを手にお礼に伺いましたとも。
それから数カ月。義母の動きはさらに激しくなっていました。
普段は、義母が自由に食べられるようにお茶とお菓子を食卓の上に置いて、もうポットとか急須とかでお茶を入れることができなくなっていましたので、冷茶ポットを用意しておりました。
私が二階に上がった隙にキッチンにやってきた義母は、お茶を沸かそうと思いたったらしく、プラスチックの冷茶ポットをガスコンロに置いて火をつけたのです。長年使っていたキッチンということで、ガスの元栓もなんなく開けてしまい(それは忘れていない)、私が気付いた時にはポットの底が溶けかかっておりました。義母はすでに自分の部屋へ入っており、「火を使ったの?」と聞いても、「なんのこと?」と。
黒く変色した冷茶ポットを見て、このまま二階で眠るのがとても怖くなった私は、義母が勝手に火を使えないようにすることに。使っていない襖をもってきて、コンロをふさいだのです。しかも、勝手に動かせないように固定。力仕事でしたが、その時は必死でした。思ったより大変な作業でしたが、途中でやめるわけにはいかず、時々現れる義母に「ご苦労様~」と労われつつ、一人で奮闘しました。こういう時になぜか必ず主人は出張で不在...。
ようやく完成した頃、私は汗だくですごい達成感。これでやっと眠ることができるとほっと一息をつきました。
義母はというと、まさかの無反応。流し台の存在すら忘れていました。
義母の場合、認知症になって以来「いつ何をするか分からない」という状態でした。なので、こんなことをしたからこう対策してみる、という風にやってきました。その場しのぎといいますか、行き当たりばったりといいますか。
だからこそ、7年の間一緒に暮らしてこれたのかもしれません。
色々なことがありましたが、何とかなるもんです、何事も。
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