なかなか捨てられない大量の洋服の処分に困っていたマロニエさん(62)の一家にとって、出張古着買取業者はとてもありがたい存在でした。「買取金額はともかく...」なんて思いつつも、「でも意外と...」などとつい期待してしまうのは人のさが。そんな査定中、業者の方が「あ、こんなものが...」と見つけたものがあったそうで...。
※実際に身の回りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
実家の母(92)に「古着の買取業者さんを呼んだから来てちょうだい」と頼まれた私(62)。
数年前に亡くなった父の衣類を処分したいとずっと思っていたところへ、タイミングよく電話がかかってきたので、お願いしたそうです。
「でも、高齢者の一人暮らしでしょ。知らない人が家に来るの、ちょっと怖いから立ち会って」とのこと。
そして訪問の当日。
きちんとスーツを着た若いお兄さんがやって来て、名刺を差し出しごあいさつ。
その後、衣装ケースに何箱もある古着を、一枚一枚丁寧に査定してくれました。
私と母は、父の思い出などを語りながらそれを眺めていたのですが、そのうちに業者の方が「あ、こんなものが...」と言って、コートのポケットから取り出したのは伊藤博文の旧千円札、しかも4枚!
「へー、すごい!」
「きっとお父さんの贈り物だね」と、はしゃぐ母と私。
やがて査定を終えた業者さんが提示した買取価格は400円でした。
古着買取の相場を知っている私は、まあそんなもんだろうと思いましたが、母はあまりの安さに、思わず「400円?」と叫びました。
でも、「ブランド品でないと値が付かないんです」と業者の方に説明され、とにかく片付けることが目的だったので、その金額でOKしたのでした。
やがて、車にわんさか衣類を積み込んだ業者さんが帰ると、母は「すっきりしたけどくたびれたわ」とポツりとつぶやきました。
昭和一桁生まれには、モノを処分するというのは大仕事なのでしょう。
それに、自分が希望したとはいえ、父の洋服があっという間になくなってしまって、少しさびしかったのかもしれません。
コーヒーを淹れて一服しながら、「あの千円札、いったいいつのだろう?」と私が言うと、「覚えてない」と母。
「30年以上前じゃない? 伊藤博文なんてもうないよ。ていうか、夏目漱石だって見かけないよ」
「今、誰だっけ?」
「野口英世」
そんな会話をした後、「じゃ、そろそろ」と帰ろうとすると、母は「これあげる」と言って、その4枚の伊藤博文さんを私にくれました。
金券ショップに持って行けば高値がつくかと思い、ちょっと調べてみたのですが、残念ながら、未使用で美品だとか、珍しい番号だとかでなければ、千円札には千円の価値しかないようでした。
もちろん売る気などなく、記念にとってありますが、コンビニで出したら、若い店員さんがどんな反応をするか試してみたい衝動に、ふと駆られたりしています。
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。