人生100年時代、60代で終活を始めるのはナンセンス!「死後」より「今生きている時間」が大事なワケ
【本作を第1回から読む】今の60代は無数の仕事から「選べる」立場! 精神科医・和田秀樹先生による「幸せな再就職」のすすめ
『60歳からは、「これ」しかやらない 老後不安がたちまち消える「我慢しない生き方」』 (和田秀樹/PHP研究所)第2回【全8回】
「孤独」「健康」「金(お金)」...老後不安の「3K」を抱えていませんか?「60歳からは、好き放題に生きていい。」を提唱するのは、高齢者専門の精神科医として延べ6000人を診てきた和田秀樹先生。『60歳からは、「これ」しかやらない 老後不安がたちまち消える「我慢しない生き方」』は、老後に対する不安を払拭できる指南書です。60代からは、むしろ「チャンス」。考え方を180度チェンジして、人生を謳歌しましょう!
※本記事は和田秀樹著の書籍『60歳からは、「これ」しかやらない 老後不安がたちまち消える「我慢しない生き方」』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。
終活なんか、しなくていい!
「終活」「老前整理」などのキーワードが流行している。高齢者は自分の持ち物を減らしてコンパクトに暮らすべし、という風潮に従うべきだろうか?
「子どものために」片付ける必要はない
片付けが、「終活」の一環として盛んに奨励されています。「死後、子どもが困らないよう、今のうちに身の回りの整理を」とすすめる雑誌記事や書籍も多数出ています。子どもがそうした情報を聞きこんで、「断捨離したら?」と言ってくることもあるでしょう。
しかし、子どものために自分の持ち物を整理するのは、考えてみればおかしな話です。片付けるか否かは、本人の価値観に基づいて決めるべきことです。
世の中の流行や子どもの要望に従うのではなく、自分がどんな部屋で過ごしたいか、今の部屋は暮らしやすいかを考えましょう。
「ものが多すぎると転倒するかも」「散らかっていて落ち着かない」「何がどこにあるかわからない」など、自分でも問題だと思うときだけ、整理すればいいのです。
早すぎる終活は後悔のもと
定年を境に終活を意識し始める方は多いですが、慎重に考えたほうがいいでしょう。
人は誰しも、自分がいつ死ぬかを知りません。しかも人生100年時代、死ぬ時期はたいてい予想よりもあとになります。
終活のつもりで性急にものを手放すと、あとから「やはり必要だった」と悔やみ、喪失感に駆られる可能性があります。手に入りやすいものならばまだいいのですが、貴重なものだったり、秘密のコレクションだったりした場合、手に入れ直すのは心身ともに多大な負担となります。
死んだあと、見られたら恥ずかしいと思うものが、誰にでも多かれ少なかれあるでしょう。パソコンやスマホに保存してある画像や映像にも、そうした類のものがあるかもしれません。
これらも、あわてて手放すのは禁物です。そういうものは例外なく思い入れの強いものなので、70歳、80歳、ときには90歳を過ぎても、まだ見たいかもしれません。
エンディングノートを書くより、生きている時間が大事
終活では、ほかにも、「エンディングノート」や遺言書に、自分の死後にどうしてほしいかを書いておこう、と推奨されます。
しかし、60代ではまだ、死後と言われても現実感が湧かないでしょう。
同じ準備をするなら、この世に存在しなくなってからのことより、生きている間のことを考えたほうがよほど有意義です。
たとえば、「任意後見」という制度。これは「成年後見制度」とは別のものです。成年後見制度は、本人が判断能力を失った際、家庭裁判所が選んだ後見人が、本人に代わって契約などの大事な判断をするというもの。対して任意後見制度は、本人が判断能力のある間に、「この人なら」という人を選べて、かつ、自分がしたい生活の形を伝えておくことができます。
「認知症になったら、自分がしたい生活なんて忘れるだろう」と思うのは間違いです。好き嫌いの感情や価値観は、しっかり残ります。重度の認知症の方でも、「今日はカレーが食べたい」といった希望をはっきり示すことがあります。そうした気持ちをスムーズに伝えられなくなる未来を見越して、早めに手を打っておくことなら、私も大いに推奨します。
つまるところ、「生きている間の時間を楽しむため」以外の終活はしなくていい、というのが私の考えです。
<POINT>
子どもの要望や世の中のブームに乗って身の回りを整理する必要はない。
和田秀樹
精神科医。1960年、大阪府生まれ。1985年に東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院、国立水戸病院、浴風会病院精神科、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、立命館大学生命科学部特任教授。映画監督としても活躍している。1987年のベストセラー『受験は要領』以降、精神医学・心理学・受験関連の著書多。近著に『老いの品格』『頭がいい人、悪い人の健康法』(ともにPHP新書)、『50歳からの「脳のトリセツ」』(PHPビジネス新書)、『60歳からはやりたい放題』『60歳からはやりたい放題[実践編]』(ともに扶桑社新書)などがある。

