人を喜ばせるのが好き。
接客の原点はおせっかい精神

今回、この本を出版することになって取材を受け、気がついたことがありました。

「熊谷さんって、どんな人ですか?」という質問を受けたノジマの同僚が、こんな答えをしてくれたんです。

「熊谷さんは、人を喜ばせるのが好きな人。普段からそうなんです。だから仕事でも、お客様に喜んでもらおうと、ものすごく一生懸命に対応しますよね」

私とはノジマに入社する前から職場が同じで、15、16年一緒に働いている別府葉子さんの言葉です。

娘ほど年齢が離れていますが、そんなふうに見ていてくれたのはとても嬉しいことでした。

人を喜ばせたい......。

それは、私が子どもの頃からいつも考えてきたことでした。

なぜかというと、埼玉で生まれた私は、小学3年生のときに岩手の親戚に預けられ、怒られるばかりの毎日を過ごしてきたからです。

人を怒って、嫌な思いをさせても、いいことなんて一つもありません。

だから、私が言われて嫌だと思ったことは人には言いたくないし、人を怒ることもしたくないと思ってきました。

その代わりに、人のいいところを見つけ、人に喜んでもらえることをすれば、笑顔が広がり、「ありがとう」が広がり、みんなが幸せになっていきますよね。

岩手の親戚は呉服店兼洋品店を営んでいたので、小学生時代から店番をしていた私は、お客様の「ありがとう」にどれほど励まされたかわかりません。

辛いことがあっても、「ありがとう」のひと言で元気になれた。

接客の仕事をしたいと思ったのも、人に喜ばれ、自分も幸せになれる仕事だからです。

将来は人に喜んでもらえる接客の仕事がしたい。

高校を卒業したらこの家を出て、早く自立をしたい。

小学生の頃からそう思っていたのに、親戚の店に縛られて、20代半ばまでは外に働きに出るチャンスがありませんでした。

初めて外で働いたのは、当時普及し始めた家庭用編み機の使い方を教える「編み物講師」の仕事です。

初めて編み機を扱う方にはわかりやすく、編み機に慣れてきた方には上手に編むコツを教えたりと、お客様に合わせて自分で工夫をしながら教えていくのが楽しかったですね。

自分でデザインや模様を考えたオリジナル作品ができるわけですから、完成したときはどんなお客様も笑顔になります。

そんな瞬間が味わえるのは、やはり、人と接する仕事だからだと思います。

接客の仕事に本腰を入れたのは、子育てが終わってからです。

呉服店の正社員になり、44歳から15年働きました。

成人式の振袖をはじめ高価な商品を扱っていましたから、「お客様に喜んでいただくにはどうしたらいいか」をいつも考えていました。

考えることが楽しいんです。

私の接客の原点は、人を喜ばせたいというおせっかい精神。

そのことを、80歳過ぎて再認識しました。

原点を忘れず、これからもずっと、人を喜ばせることを大切にしながら生きていきたいと思います。

人を喜ばせることが、私の喜びですから。