そして説明が終わると、別の場所で研究室個別説明会がはじまった。就職活動の合同説明会みたいに、狭い空間にたくさんのブースがぎゅうぎゅう詰め込まれているような感じだった。各教授や院生の前には、受験生の長蛇の列ができていた。
「ただっちは行かないの?」
「うーん、いやぁ、何も準備してないから聞きたいことが思い浮かばないし。そもそも受けるかどうか決めかねてるし」
「自分の研究の話はしなくても、パネルとかを見て質問したり、院生にどんな研究してるか質問してみたら? せっかく関西から来たんだしさ」
「うん......」
正直めちゃクソ気が進まなかった。そもそも私はえげつないほど人見知りでコミュ障だし。行ってもどうせ挙動不審な奴って思われるに違いない。
「それに、研究者を目指すんでしょ?」
......は! そうだった!
ここは、私の母校(仮)で、私は今、研究者になる道を歩みはじめているのだった! 人見知りだからってこんなところで、もじもじ蚊帳の外にいて一体なんになるんだよ! 行くぞ、行くぞ、私は行くぞ。当たって砕けろ! 飛んで火に入る夏の虫!
夫の一言で、思いっきりエキサイトしてしまった私は、なんの武器ももたずに戦場へと向かってしまったのであった。あーめーん。